∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

日本のこよみと稲作農家

【雑節】


 日本のこよみには五節句、二四節気、雑節、九星など古来から伝わってきた季節を表す言葉がある。よほどでないとカレンダーとして日常的には使わなくなったが、節目の日や季節を象徴する日などは現代でも活用されている。
 たとえば端午の節句五節句のひとつ、夏至は二四節気のひとつという具合い。
 ちなみに雑節は、民族行事や年中行事として活用されることが多い。大きく分けると8種、それを細かく分けると全部で16種。土用のように四季折々、18日間続くものもある。


入梅芒種


 そして今日、6月11日は雑節の入梅。実際の梅雨入りとは違って、いわば昔のカレンダーでは今日から梅雨に入る。
 とは言っても、東京は、まさに今日が梅雨入りであり入梅であるかのような天気だった。朝からシトシト、ザアーと雨が降る梅雨の季節らしい天気だった。
 ところで、二四節季には芒種(ぼうしゅ)という言葉がある。
 稲の穂先のように芒(とげのようなもの)のある穀物の種まきをする頃という意味で、田植えの季節の始まりを告げる日を表している。現在の田植えはかなり早まっているようだが、それでも梅雨と田植え、入梅芒種は季節を表すひと組の言葉として使われることも多い。
 入梅芒種は、都会では連想するスベもないが、農業関係者にとっては稲作の始まりを告げる重要な「節」なのである。


【田植えと経済的安定】


 ところが、今年は田植えが出来ない稲作農家もかなり多い。津波によって海水に浸かり、塩害があるために今年の稲作は諦めたという農家。放射能汚染の制限地域に指定されたため、田植えどころではないという農家。
 安定した自然と、順調な季節の変化がなければ成り立たない農業にとって、今年は未曽有の経験を強いられる年になってしまった。もちろん、稲作農家の収入はない。日本人の主食を作るというプライドと経済的な安定の両方をもがれてしまったわけである。
 きっと秋になると「今年のコメの生産量は減少」というニュースが流れるのだろう。だが、農家が陥るであろう経済的な危機を言及することがあるだろうか。あっても「補償」うんぬんという言葉で済まされるのではないかと想像している。


【たわわに実る】


 東北地方が日本の工業にとって重要な拠点だったことは大震災直後から言われてきた。野菜や乳製品、畜産などに降りかかった激甚な危機に関する報道は放射能汚染と言う言葉で毎日のように報道されている。
 しかし、稲作の一大拠点であることは、盲点でもあるかのように忘れられてきた。塩害のことは報道されても、本当に大切な「コメが作れるかどうか」についてはあまり触れられることはないようだ。一番大切なことなのに。
 
 
 青々とした苗には梅雨空が似会うのに、今年は苗のない梅雨空を見ることになりそうだ。


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