∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

インサイダー取引

【私物化】


 経済産業省の元審議官がインサイダー取引の容疑で逮捕されました。
 業績不振が続いていた半導体メーカーを存続させるため公的資金が準備されていることを知りながら、その企業の株を密かに買い入れ、数百万円の利益を得たとのこと。
 準備といっても自分が関与した資金計画なのだから詳細まで知っていて当然です。そんな立場にある人間が「この会社、生き残るのだから今のうちに株を買っておいて、再建計画が公表された時点で売り飛ばせば儲かる」と考えたのでしょう。つまり「他人の金で生かして儲けた」というワケです。利益数百万ということなので手に入れた株はあまり大量ではないのでしょう。
 つまり、剛腕を奮って少しだけ自分のお金を出して儲けるという小市民的エセ権力者のやり口です。許されるません。インサイダー取引をしたということと同時に、企業をあたかも「金の卵を産む鶏」のように扱って自らの出世を図ったり、私腹を肥やしたりするなんて。


【小説の世界で】


 確か『インサイダー取引』というタイトルだったと思うのですが、アメリカの小説で為替取引を舞台にして数カ国の国営銀行の総裁とサルディニア島に住む大富豪が登場するものがありました。何月何日に公定歩合をこれだけ動かすので、その直前に操作をしておけば、内情を知らない国際市場が自分たちの利益を創りだしてくれるというものだったと思います。公定歩合や為替取引に、ありがちなハニートラップをミックスさせたストーリーです。こちらの場合は一度の取引で数十億円単位の利益を挙げるという設定になってはいましたが、公定歩合を決める立場にある者が市場原理を利用して大儲けしたというもの。
 こちらも「マッチポンプ」式のインサイダー取引です。違うのは金額が非常に大きいことと「企業」ではなく「国」を私欲のために利用したという点。そしてもうひとつ。こちらが小説だということ。現実ではないわけです。


 といいつつも、先日スイスの連邦銀行総裁がインサイダー取引で逮捕されました。こちらは「事実は小説より奇なり」といったところでしょうか。


【どうして?】


 自分の実績を高めるだけで満足できずに、財布の中までパンパンに膨らまそうとする。財布の中を北風が吹きぬけていくような僕には別世界の物語かもしれません。だからでしょうか。「怒り」より「呆れる」とか「羨む」という感情のほうが強く出てきます。
 こんな離れ業の使えない僕は一歩ずつ足場を固めながら生きていきます。それでこそ「人間」だと思うのです。


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