∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

失敗のツケは年金受給者に

デリバティブ


 ウオールストリートジャーナルや日経の報道をまとめると、今回のAIJの失敗は「2000億円の資金をケイマン諸島のファンドに預け、合計57兆円のデリバティブ取引として運用。運用益はバミューダ諸島の信託銀行経由で香港のヨーロッパ系銀行へ。そして、そのほぼすべてを失った」。簡単に言えば図式になるのでしょう。
 2009年にウオールストリートジャーナルで「あまりにも高成績過ぎる。どこかに危険性をはらんでいるように思える」と指摘されていたとのこと。ワケ知りの評論家のなかには「その時点で詳しく調査をして、実態を焙り出しておけばここまでの事態にならなかった」とか「各企業の運用担当者が危機感を持てばある程度は回避された」などとコメントする人だって現れるでしょうが、机上論で「たられば式」に考えても「後の祭り」です。ないものはないのですから。
 当初から運用に問題があったという報道もありますが、そうでないとしても、景気のよい運用計画書や派手な担当者接待などで資金運用を続けさせたのでしょう。倫理感が欠如しがちな金融商品の営業にはありがちなことです。そんなセールスに惑わされた担当者の責任はどうなる、という解説者だって現れるかもしれませんが、これだって金融の落とし穴を熟知していない素人が運用を任せたのです。通常の感情で考えると責められるものではないでしょう。
 しかし厚生年金基金用として運用資金を集めていたこのファンドに税金が流入しているとしたら……。つまり、資金運用のプロであるべき年金官僚たちがどのような判断基準で運用を続けたのか。地に足をつけて年金とは何かを考えることもなく、すべてを事務処理として処理してきた彼らの今後の対処方法が知りたいものです。


【年金受給者】


 金融事件としては巨額の粉飾と言える事件かもしれませんが、事はそれだけでは済みません。
 多くの名もない市民が老後のためにと願い、預けた資金が消えて無くなったのです。ただでさえ年金減額される時代なのに、この人たちの老後はどうなるのでしょう。
 もし、政府管掌の年金部分の運用まで手を広げていたとしたら「基金部分だから泣くしかない」などとは言っていられないはずです。こんな状態に陥れたAIJの責任は極めて重いと言わざるを得ないでしょう。
 おそらく来週はこの事件で新たな展開があるでしょう。金融庁だけでなく、検察も乗り出すでしょう。当然、なんの役にも立たない政治家だって一家言を発することでしょう。
 それでも、結論として、このファンドに預けた年金基金は戻ってこないのです。いくら訴訟を起こそうにも相手は「廃業予定」の会社。いくら望んでも「ないものはない」の泣き寝入りになりかねません。せいぜいAIJの経営陣が懲役刑に処される程度でしょう。
 また、名もない市民に「間違った企業倫理」が押しつけられる事件が起こってしまいました。


[485/1000]