∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

若松孝二監督

学生運動とピンク映画】


 学生時代、少しだけ映画の勉強もしていたこともあって毎年200〜300本程度の映画を見ていました。そんな時期、若松孝二作品も何本か観ました。新宿・蠍座だったか、名画座系の池袋・文芸座だったか定かではなくなってしまいましたが、初めて観た時は「ああ、こんな映画の作り方もあるんだ」と圧倒されたことをいまだに覚えています。
 暴力、エロス、怒り、反権力。若松作品の底流を流れるテーマは当時の反体制派学生には絶大な人気を誇ったと言われていますが、僕にとっては“疲れる”作品が多かったような記憶もあります。おそらく、ピンク映画なのに、現実を直視し、えぐり出すようなシーンが登場する演出に当時の僕はついていけなかったのではないかと自己分析しています。あるいは若松作品から噴出する強大なエネルギーに圧倒されていたのかもしれません。なにしろ当時僕は、ストレートにストーリー展開してくれる作品か、イングマール・ベルイマンの作品のような哲学的な演出のものを好んでいましたから。


 そんな若松監督が交通事故で亡くなりました。76歳だったとのこと。深夜の新宿内藤町でタクシーに轢かれて重症を負い、その後一日経ってからの死です。
 事故のニュースに触れた時は、「新宿というところや、交通事故というところが監督らしいなあ。きっと酔っぱらって車のことなど眼中になかったんだろうな」と勝手なことを考えていたのですが、亡くなるとは夢にも思いませんでした。あありにもあっけなさすぎます。報道によると福島・原発問題をテーマにした作品に取り組みたいと語っていらしたとか。若松監督の視点で原発事故に切り込むとどうなるか観たかったです。きっと、誰も気付かなかった視点で迫ってくれたはずなのに。残念です。


 ご冥福をお祈りしたします。


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