∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

読者プレゼント

内部告発


 「先輩、秋田書店、やっちゃいましたね」。
 「そうだな、今どき珍しくないかな。いや、今も昔と同じなのかな」。
 「僕も20台の頃、読プレ用に名前を考えたよ。」。
 「エッ、先輩もそんなことやってたんですか」。
 「そう、あの頃は、なんの悪気もなくやってたね。でも、景品法が厳格になったり、アンケート以外に読プレが必要なくなったりして、どの雑誌も後ろめたいことから手を引くようになったんだ。だから今どき賞品をズラッと揃えるスタイルって少数派でしょう」。
 「そう言えば、あまりみませんね。読者アンケート用のプレゼントは出稿クライアントの中から選んで経費を払ってオリジナルを作ってもらうのが主流じゃないんですか」。
 「おっしゃるとおり。そのほうが希少価値があるし、クライアントとのつながりも深まるしね。読者にも良し、出版社にとっても良しというワケよ。経費を払ってるから絶対に送るしね」。
 「それにね、小さな賞品のほうが送料も安く済むし、送りやすいからね」。
 「それなのに、どうして秋田書店って読プレのやり方を考えなかったんでしょうね。まあ、今回のことで全誌、読プレ廃止でしょうから、いまさら考えなくてもいいでしょうけどね」。
 「そうだね。ひょっとすると『ミステリーボニータ』だっけ、あの本、休刊だな」。タイトルを変えて再出発したほうがスッキリすると思うな」。
 「それにしても、あの内部告発した女性も正義感が強いといえばそうだけど、出版社の黒い部分が本当にイヤだったんだね。抗議しても聞き入れてもらえなくて、病気になって休職したんだろ。そして半年ほどして会社から『読プレ発送の仕事もしないし、読プレ賞品をパクった』という理由でクビになった」。
 「あの理由ってヘンですよね。単なる嫌がらせというか、蹴散らせたって感じです」。
 「ところで秋田書店って出版労連に入ってないのかな。今回も解雇された後、誰でも入れる首都圏青年ユニオンに入って後ろ盾になってもらったんでしょ。派遣ってことだから社内組合から応援してもらえなかったのかな。わからんなあ」。
 「なんだか、これから話がドンドン大きくなりそうですね」。
 「そうだね。解雇撤回と言っても派遣だから派遣法も関わってくるだろうし。大バカヤロウの烙印を押された秋田書店と、黒い社会通念よりも信念を貫いた女性。体力をすり減らしただけの決着にならないように願うばかりだな」。
 「さあ、仕事に戻るか。今夜も終電だな」。


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