∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

今を映し出すような歴史

【読み終わって思うこと】

 一ヶ月半ほど掛けて、『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)という三冊組の文庫本を読み終わりました。オリジナルはアカデミー賞監督賞を2度も受賞しているオリバー・ストーンが、膨大な資料を元にして、描き出したテレビ・ドキュメンタリーで、それを元にして日本でも数年前に書籍化され、今回文庫本として刊行されたものです。極めてザックリいうと、アメリカと戦争との関係を時系列で解き明かした本ということができます。

 アメリカは建国以来、90%以上の月日、戦争に関わってきました。戦場にしたのは南アメリカ大陸の各国にはじまり、第二次世界対戦時のドイツや日本、フィリピン、ベトナム、タイなどの南アジア、朝鮮半島、中東各国など、おおまかに言えば世界中で戦ってきたのがアメリカです。
 それらはすべて「自由」を守るための戦いとされてきました。しかし、その影にはフルーツを含む食料生産や非鉄金属や石油などの地下資源を掘削する権益、増大する共産主義勢力からアメリカの優位性を守るなどアメリカ資本の権益を守るためのものばかりだとこの本では解き明かしています。同時に、時のアメリカ大統領が戦争に突入する時に取った政策や思想、そして世論をどうやって誘導したかも描き出しています。

 ちなみに、以前どこかで聞いた"Freedom isn't free(自由はただではない=アメリカを守るためには犠牲は止むを得ない)"という言葉も思い出してしまいました。

 アメリカの戦争史を描き出したこの本を読んでいて気がついたのは、それぞれの時代で政治的権力者の発想と、近頃の日本の政治動向に符合するものが非常に多いということです。特に、戦争に対する姿勢や思想、経済界が政治に及ぼす影響など、アメリカの歴史的事実と日本が選ぼうとしている方向性にはピタリと符合するところが多いように感じるのです。

 英文和訳そのままで、推敲された翻訳になっていないように感じるところも多い本でしたが、読み終わった今では、政治は表面的な事例より、裏に隠された密約やベクトルを想像すべきという鉄則を忘れてはいけないと改めて心に刻むと同時に、自分自身の姿勢を決める場面でその都度思い浮かべるべき本だと確信しています。

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