初代テレビっ子世代が夢見た世界
「パパは何でも知っている」「奥様は魔女」「コンバット」「月光仮面」「少年探偵団」「チロリン村とくるみの木」「奥様映画劇場」……、そして「兼高かおる世界の旅」。
図太くなった今と違い、病弱だった僕は「初代テレビっ子世代」でした。
夢のような世界が目の前で繰り広げられるアメリカのテレビドラマ。午後半ばからテレビにかじりついて見た洋画の数々。風呂敷を首に巻いて走り回ったり、大声で主題歌を歌っていた日本の人形劇やアクションもの。どれもこれも子供の頃に体験した忘れられない記憶です。
そんななかでも「兼高かおる世界の旅」は特別なものでした。
──上品な言葉遣いの女の人が世界中を巡り紹介してくれる──。
今では当たり前になった海外取材ですが、戦後10数年しか経っていなかった当時、世界を旅すること自体が大冒険でした。しかも男尊女卑が当然だった時代にひとりの女性が毎週世界中のトピックスを次々と紹介してくれるなんて「想像を絶する」ような企画。僕にとってはまさに夢のような番組だったのです。
大人になって海外に出かけるようになった時「現地を知る秘訣は、現地の人と語り合うこと」だと信じるようになっていた背景にはこの番組があったのかもしれません。
そんな素晴らしい世界を作り出してくださった兼高かおるさんが亡くなったと報道されました。90歳だったようです。
当時、神戸の片隅で生きていた僕が世界中の興味深いシーンの数々を見つめながら、自分でも世界を駆け巡ってみたいと思えるようになったのは「兼高かおる世界の旅」の影響だと確信しています。
兼高かおるさん、本当にありがとうございました。安らかにお眠りください。
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