おばちゃん、話が止まらない
珍しく根岸あたりへ。鶯谷と言うよりも、古風に根岸という名のほうがピタリとはまるこの街でフラリと入った昔ながらの喫茶店がここまで「下町の喫茶店」だったとは……。
入ってコーヒーを注文し、タバコに火をつけながら「ウウ、寒い」と言った瞬間のことでした。そこのご主人らしきおばちゃんが喋り始めたのです。
「寒いよねえ」というのはいいとして、池江璃花子選手のこと、年金のこと、大相撲のこと、雪のこと、電気代のことなどなど、などなど。喋る、しゃべる。ドリップで入れたコーヒーを僕の所に運びながらも、喋る、しゃべる。
とにかく、おしゃべりが止まらないんです。一見さんへの気遣いというレベルを超えたもの。頭に浮かんだことを次から次へと話すその姿は、おばちゃん版の明石家さんまか古館伊知郎かといった具合いだったのです。
突然の「語りかけ攻撃」に遭って僕は話に付いて行く、というよりは相槌を打つだけで精いっぱい。何を話したのかも忘れるくらいでしたが、お店を後にした時には心地よい疲れと共に、溜まっていたストレスまでスッキリしたような気分になっていました。
話についていく自信はありません。相槌を打つのが忙しくてコーヒーの味も判りません。でも、気持ちいい時間でした。
これぞ街の喫茶店。またいつか、近いうちにフラッと立ち寄ってみることにします。おばちゃん、待っててね。
[3027]