悲しい雨が降り続く夜
7月7日。七夕。東京では今も雨が降り続いています。
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「酒涙雨(せいるいう)」:七夕の夜に降る雨のことで、年に一度だけのランデブーの夜に雨が降ったために会えなくなった彦星(牽牛)と織姫の気持ちを表した言葉。
「洗車雨(せんしゃう)」:七夕の前夜に降る雨のことで、明日に備えて彦星が乗る牛車を洗車するために降る雨のこと。
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明日の出会いを楽しみにしながら牛車を雨に打たせて洗ったのに、当日も雨。おかげで期待に胸踊らせていた出会いの夜は一年先になってしまったという、なんとも悲しい名前の雨の名称です。
─出会いを待ち望む出会いをより素晴らしいものにしようとする男と、そんな男の気持ちを知っている女。そんなふたりに待っていた悲しい夜。─
日本語には雨を表す言葉が400以上あると言われていますが、そのなかでも、このふたつの言葉ほど現実が課す酷い仕打ちを表したものはないと思っています。
この言葉を表した古(いにしえ)の人も、人と人との出会いにありがちな悲しいドラマを体験していたのでしょうか。それとも、悲しいドラマがあるからこそ、出会った時にいっそうのときめきを感じるのだと達観していたのでしょうか。
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