国立近代美術館工芸館が移転する前に
地下鉄東西線竹橋駅から坂道を約10分ほど歩いた所にある端正なレンガ作りで独特な存在感を醸し出してきた国立近代美術館工芸館。
重要文化財に指定されている旧近衛師団司令部を活用したこの美術館で僕はどれだけ美の結晶をみせてもらってきたことか判りません。
そんな、小振りながらも日本の近代工芸を代表する秀逸な作品ばかりを展示してきてくれたこの博物館が石川県金沢市に移転するのが発表されてから数年。とうとう今年3月には閉館します。
国立近代美術館工芸館が東京で開催する最後の企画展になってしまった『2020 PASSIONS for Crafting Crafts-さらば。』に行ってきました。
丁寧なうえにフレンドリーな雰囲気で接してくれる受付で入場券を買い、ロッカーにバッグを預けて二階へ。
染織・漆・金工・陶芸・人形・民芸・モダンアートなどを20の局面から切り取って展示することで「日本の工芸がもっているパッションを感じてもらおう」というのが今回の展示のキーワードですが、キュレーターのそんな想いは見事に結実したようです。
それにしても、ここ来れるのがあと2カ月とは。金沢市に新設される「近代工芸館」に収蔵品のうち8割近くが移転するので、作品自体はそこに行けば再会できると判ってはいても、距離的なことを考えると、さすがにフラリとは行けそうにありません。
大所高所に立って、金沢に近代工芸の逸品を集結させる拠点を作るための第一段階と言われれば納得せざるを得ませんが、個人的にはなんとも寂しい限りです。
近代工芸の美を発信し続けてきた国立近代美術館工芸館が4月に。モダンアートの旗手だった原美術館の伊香保への移転が12月。今年は、建物自体が貴重な表現でもあったミュージアムふたつとお別れしなければいけない“節目の年”になりそうです。
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