思い出せ『失敗の本質』
今年の3月、政府のコロナ対応について思うところがあって、中央公論新社から出版された『失敗の本質─日本軍の組織論的研究』をもう一度読み返しました。
感染症の専門家なしで対応し始めた時、Go To トラベル・キャンペーンの見直しについての考え方や、新たな施策よりも国民の努力に力点を置いたコロナ抑制など、政策決定の核となる展開点それぞれで国の行く末を決める権力構造と帝国陸海軍の思想に極めて似通ったところがあると思うようになっています。
旧帝国陸海軍を率いた人たちの思想の原点は、調査分析よりも精神論やプライドを優先させ、理想的な展開以外は否定したうえで国民を洗脳し、責任回避のために国民に甚大な損害を与えるものだったと信じています。
そして、今回のコロナ危機に対応している政府は。
状況把握や展開予測などの事実を正確に伝えて、国民を納得、理解させる努力よりも、前例に従って作り上げた施策の正当性を訴えることから始まり、事態が推移しても方針を見直すこともなく、手詰まり感が強くなると対応の軸足を国民に委ねるようになったと言ってもいいと感じています。
ここ数カ月でリーダーの資質をまざまざと見せつけられてきた市井の民は、混乱を引き起こさないように自主規制し過ぎの感が強い報道と、現場に近く生の声を反映させ易い地方行政期間の施策を拠り所とするしか手立てはないと判断しているのではないでしょうか。
戦時中のように、政府の一部であることを強いられた報道機関や、洗脳させられた行政機関の有りようが全面否定されていなかったらと考えるとゾッとしてしまいます。
気付いてはいるが提言や行動は控えたいという“失敗の本質”から抜け出すことこそ今、政府が取り組むべきことではないでしょうか。
リーダーシップを取る人たちにはぜひ、コロナについては事態の推移に即した「朝令暮改」こそ良策だということを理解してもらいたいものです。
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