厚労省の見解への違和感
昨日公表された1バイアル7回接種の報道が世間を駆け巡っている。5回だったものが6回になり、今度は7回。限られた資源を無駄なく使い切って、同じ配給量でもより多くの人に接種出来るのだったら、数は多いほうがいいと思うのだが、どうも厚労省の見解は違っているようだ。
「これまで5~6回の接種でお願いしています」。へそ曲がりな捉え方をすれば、「余計なことを考えずに言われたとおりにしろ」ということである。
少ない配給量を効率よく使おうとする現場と、従来の常識と既定路線を守ろうとする官僚。立場の違いによってここまで意識が違うのかと驚いてしまう。これでは知恵を絞ってきた現場の取り組みも台無しである。
難局を乗り切るために必要なのは、直面した現実を見据えながら発想を柔軟に転換する力。けっして既定路線を守ることではない。
百歩譲って好意的に考えてみると、厚生官僚は現場から提案された発想をもとに見解を転換していくことを、コロコロと省令を変えると国民から朝令暮改の施策と思われるのではと勘違いしているのだと思う。
もしそうだとすると大きな間違いだ。
未知の環境を“手懐ける”時には、目指すべき着地点に向けていかに現場の主張を取り入れるかが重要なファクターだ。言い換えれば、根っこはブラさず、枝葉を広げ、ある程度目処が立ったところで枝葉を剪定していくわけだ。
この作業を“メンツをつぶされた”とか“仕事を増やすな”と感じたとしたらプロジェクトはどこかで破綻すること必至である。
こんな状況を一変させることのできるのは官僚を率いる政治家しかいない。いわば、速やかに検証作業を進めさせ、可能だと分かったら実行させる。鶴の一声である。もちろん、強権と取られても、機転を利かせて、より良い方法を即採用させる力量は必要だが……。
コロナ禍は、苦境を乗り越えようとしている経営者だけでなく、政治家にも先見性や機転や力を惜しまない突破力を求めている。今こそ政治家の力量を見せてもらいたいものである。
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