稽古始めの日
15世紀前半(室町時代)に能の始祖と言われている世阿弥は『風姿花伝』という能の理論書を著した。
現代に伝わる能や歌舞伎の根本をまとめた書とされ、今も教え伝えられているが、その冒頭に「この芸において、おほかた、七歳を以て初めとす」と
記されている。この記述を意訳すると「能の芸を習得し始めるには7歳の6月6日から始めるとよい」ということになる。
数え年の7歳は満6歳のこと。これが今の習い事は6歳の6月6日に始めるといいという風習につながっているわけだ。
この「稽古始め」という風習を「何かを始める日」と捉えてみるとどうなるだろう。
何も新しい勉強でなくともいい。何かに挑戦しようと決めることでもいい。ハードルが低くなるように、あくまでも緩い基準を設定すると取り組みやすいはずだ。必要なのは、一度決めたものは諦めることなく続けること。何年か経って高みに到達していればいい。
さて、そんな芸事始めの日。私は、今のところ海の物とも山の物ともつかぬ課題に取り組む準備をし始めた。正直なところ、生まれてはじめてのゲン担ぎである。
常に前向きでいたいという個人的な思いもあるが、同時に、コロナ禍に沈静化の気配が濃厚になり、社会が大きく動き始めたときにつまずかないようにしたいという思いに向けたトライアルでもある。また、消極的になりがちなご時世だからこそ積極的であれという自分への叱咤激励でもある。
私にとって今年の稽古始めは、新たな挑戦をスタートさせる日になったようだ。
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『芒種』‥田植えの季節。
転じて、先々の実りに向けて着手する頃
[0606 - 3803]
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