おのおの方、ご油断召さるな
宣言も措置もすべてが解除された金曜日の夜。日本中で“生中でカンパイ”の声が聞こえていたはずだ。土曜日の朝には“渋滞中の高速”を経験した家族やグループがいたはずだ。
全面解除の“大号令”が出た途端に日本に住む人々の気持ちは明らかに変わった。弾けた人もいれば安堵の声を出した人もいる。とにかく誰もが一気に元気になった。
ほとんどの人が今回の第五波はこれまでで最大の危機だと感じていたはずだ。そんな崖っぷち状態に対処するために人々は、公的な制限以上に、自らに厳しい行動制限を課してきた。
そんな鬱屈とした状態から逃れられるチャンスが来たのだから、誰もが開放的になって当然である。
まだ営業時間や収容人数には制限があるとはいえ、誰もが渇望していたことに飛びつくのは当たり前。なかには弾け過ぎて突き抜けてしまった人だっているだろう。
しかも、ワクチン接種率は確実な歩みで上昇している。医療体制も変わってきている。治療薬の開発も進んでいる。毎日の新規感染者は驚くようなペースで減少し続けている。こんな今の状況をみれば、誰もが収束に向けて進み始めていると感じてもおかしくない。
そんな風潮に水を差すのは恐縮だし、野暮の極みとわきまえているが、それでも耳障りな小言を言わせてもらおう。
まだコロナ禍は終わっていないのだ。規模は抑えられるだろうが、必ず第六波はやってくる。
今、弾けすぎたり無茶をし過ぎたりすると感染リスクは一気に上昇する。
いま必要なのは、これまでに経験してきた感染の脅威を常に思い起こしながら、自制心を忘れないという勇気ある警戒心である。
忠臣蔵の大石内蔵助風に言えば、今の日本に必要な姿勢は『おのおの方、ご油断召さるな』である。
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『秋分』‥秋の彼岸。夜が長くなり、駆け足で秋が深まる頃
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