∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ なるほど、その手があったか ≡≡

ウクライナ
NFTで支援も軍費も調達

 3月26日、ウクライナ政府は「資金調達のためにNFTを活用してロシアによる侵略に関するタイムラインなどを立ち上げる」と発表した。
 3月初旬にアートの世界でNFTを利用した資金支援が始まっていたが、今回の取り組みは、信頼される報道をもとにした侵略の過程をウクライナの芸術家がアート作品に仕上げた、いわばコラボレーションである。これによってウクライナ政府は、少なくとも、100億円規模の資金調達が可能になるだろう。また、アート作品による支援も数10億円以上になると見込まれている。

 私はこの情報に接して「なるほど、その手があったか」と感心してしまった。ウクライナは戦時の資金調達を根幹から変えてしまった。無理も無茶もしない。秘密裏に事を運ぶこともしない。インターネットで情報を公開することによって世界中の“一般市民”から資金を募ろうなどと考えた国はこれまでなかった。

 近世の戦争では、日本も含めた戦争当時国はありとあらゆる手段を繰り出して軍費を調達するのが当たり前だった。
 たとえば「膨大な量の軍票や戦時国債を発行する」「世界的な投資銀行から調達する」「友好国からの借款で賄う」「占領地から略奪する」などがそれに当たる。

 ところがウクライナは自国内でで調達しようとは考えなかった。ブロックチェーン・テクノロジーを活用したNFTで調達しようと考えたわけだ。
 コレクション名は”META HISTORY MUSEUM OF WAR”。誤解を恐れず古典的な言い方に置き換えると、ウクライナは「国営の資金調達サイト」を立ち上げたわけだ。

ブロックチェーン:仮想通貨などの暗号資産に活用されている“不特定多数の人が監視するネットワークを活用して、入力された情報を書き換えることの出来なくするデジタルテクノロジー
※NFT:非代替性トークンと呼ばれるもので、デジタルアートや歴史的な記録などを“替えの効かない資産”として位置づけるもの。特にデジタルアートが億単位の金額でオークションに掛けられたりしている。また、歴史的な名画を精密に複写した写真を“トークン(暗号資産)としてマーケットに公開している美術館も出始めている。

 ウクライナ侵略は、正しい情報がインターネットで伝えられるようになった《SNS戦争》だと言われているが、それだけではなかったようだ。 SNSを見ている世界中の市井の人々──オークションでの利益だけを追いかけている人もいるが──から正々堂々と軍費を調達なんて、デジタル感度の低い人間や、情報統制に躍起になっている国には想像もできないことである。はっきり言って、ロシアでは不可能だろう。

 ひたすら事実を伝え、窮状を訴える。従来なら国と国との間の極秘事項に該当していたようなことでもSNSで公開する。しかも、アメリカによる直接的な軍事情報提供や、ヨーロッパ各国の情報共有、当事国以外への情報発信なども後押しをしている。

 ウクライナは“デジタルを制する者が世界を制する”という事実を証明することで戦争の姿を変えた。
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[season12/0328/25:50]
春分』‥春の彼岸。この節気を境に陽光の降り注ぐ時間が増えていく
photograph:SUNRISE hits tokyo sky tree

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