勘弁してくれ!
『国民皆歯科健診』
参議院選挙を前にして、なんとも強引極まりない骨太の方針が自民党から提出されました。現在、高校生まで義務化されている歯科検診を全国民に適用しようというものです。
口腔の健康増進は健康寿命の延伸に繋がり、それによって医療費が削減されると国民皆健康保険制度の維持につながるというもっともらしい三段論法で組み立てられた方針のようにみえますが、私はこの方針に大きな疑問を感じています。
新型コロナウイルスの感染予防に効果のあるマスク着用やコロナワクチン接種でさえ「義務」ではなく「お願い」レベルだというのに、なぜ歯科検診だけは義務化しなければいけないのでしょう。
たとえ「罰則を伴わない義務」として立法化されるとしても、個々人が受け取ることになる行政からの通知文書は、それなりに精神的なプレッシャーを感じさせるものになるのは確実です。
今年7月に行われるであろう参議院選挙で比例区からの立候補がほぼ確実な方への強力な応援だとは容易に想像できます。
しかしそれ以外に、ワクチン接種も含めたコロナ禍の医療対策として、医師や看護師にそれ相当の配慮をしてきたので次は日本歯科医師会の番だ。こんな深読みだって出来ると思うのは考え過ぎでしょうか。
日本歯科医師会にせよ、行政の諸機関にせよ、現在の「歯科検診のお知らせ」程度では検診数が増えないという事実をどう捉えられているのでしょう。なぜ検診数が増えないのかの検証はされているのでしょうか。
現在「80歳になっても20本の残歯」という8020運動が広げられていますが、歯周病や歯槽膿漏の危険性について充分に情報発信されているのでしょうか。
一部の歯科医院の間で「1本ずつ治せば長期間に渡って治療費が入る」という算術が囁かれていることはご存知なんでしょうか。
そしてなによりも、私のように「頭が割れそうなほど切羽詰まった激痛を感じるまでは歯医者に行かない。ヒューン、キューンと唸りを上げるドリルを口の中に突っ込むなんて勘弁してくれ」と考えている人間がいるという厳然たる事実にどう対処されるのでしょう。
拙速な立法化には論旨の矛盾と表面化しない反対論が付きものです。実現するかどうかは票次第という選挙公約程度に留めておくのが妥当と考えますが、いかがでしょう。
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[season12/0530/25:40]
『小満』‥草木が伸びはじめる頃。夏めいていく中に梅雨の予感。
photograph:souji-ji, tsurumi, city of yokohama
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