∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 散歩の極意 ≡≡

自ら進んで道に迷うこと。
それしかない!

 コロナ禍が治まってきた(とされている)昨今、谷中辺りにも観光客が戻ってきたなと感じることが多くなった。
 ここ2~3週間、おなじみの『谷中銀座』や『よみせ通り』あるいは『三崎坂』や『諏訪台通り』には人通りが戻ってきているようだったが、以前のような賑わいにはほど遠いものだった。特に、いちばん谷中の風情を醸し出しているはずの『細い路地』で地元民以外を見かけることはほぼなかった。

 ところが今日、久々に明らかに観光客と分かるグループと出会ったのだ。彼らは『へび道』近くの細い路地しかない所でグーグルマップを見ながら方向を確認していた。
 声を掛けると「谷中銀座に行きたいのですが」と答えてくれたので、その場所からの道順を事細かく説明したのだが、彼らはその説明を細かくて丁寧と感じたらしく、やけに感謝されてしまった。
 こちらとしては、細かく説明しないと辿り着けないほど入り組んでいるからそうしただけだったのだが、彼らにはこちらの真意が理解できなかったようだ。
 そして私は、道案内を終えてから「谷中を散歩するならグーグルマップを見ないで、盛大に迷子になるのがオススメですよ」と語りかけた。

 私は盛大に迷子になることこそ散歩の極意だと信じている。

 ウロウロしているうちに元の場所に戻ったとか、思いもよらなかった場所に出てしまったとか、行こうとしていた所に行けなかったという珍道中がなければ散歩は面白くない。グーグルマップを確認しながら辿り着いたとしても、そこまでで確認したのは四つ角の位置だけで、街並みはほとんど見なかったという情けない結果しか残らない可能性もある。

 グーグルマップで確認したルートを辿って最短距離で目的地に着き、ネットで仕入れたオススメ店に入って、オススメの映えメニューを食べること。それこそが街歩きだと誤解している人が多いようだが、それでは地元とのふれあいはごくわずかしかない。その地の風情を満喫したければ、迷子になるのが一番だ。

 なによりも、人から教えられたものをトレースするばかりだと限定された充実感しか味わえないではないか。私は「ウロウロ・キョロキョロ・アレレ」こそ散歩の極意だと信じている。
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[season12/0612/25:00]
芒種』‥古くは田植えが始まる頃。梅雨空の下で紫陽花や花菖蒲が咲く
次候‥腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる):里に蛍が飛び始める頃
photograph:IRIS:horikiri-shoubuen, katsushika City
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