∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 忌まわしい記憶が蘇った事件 ≡≡

香港の水上レストラン
『ジャンボ・キングダム』の沈没

 もう30年近く前の話だ。その時私は家族で香港に遊びに行っていた。旅の最終日、記念になればと、世界的にも有名だった水上レストラン『珍宝王国(ジャンボ・キングダム)』に自分で予約して出掛けた。私以外は全員が始めての香港だったので、日本風の高級中国料理で出てくる北京ダック、フカヒレ、魚の蒸し物などのメニューを頼んだ覚えがある。

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▽そして、私はクレジットカードで支払いした。
▽そして、私のスキミングされた。
▽そして、私のクレジットカードは偽造され、パリで使われた。
▽そして、クレジットカード会社の調査員は教えた覚えのない会社の電話番号に電話をしてきた。

「あなたは○月○日に香港のジャンボ・レストランでお食事されて、弊社のクレジットカードで○○香港ドルをお支払いになりましたね。
「あなたは○月○日から○月○日まで香港の□□ホテルに滞在していましたね。そして帰国後は日本から出国されていませんね」。
「あなたのカードはスキミングされたあと、パリで限度額いっぱいまで使われました」。
「すでに当方であなたが使ったと確認がとれたもの以外、すべての支払いを停止しました。あなた宛の請求書も新たなものに書き換えました」。
「この電話以降、お手元のカードは使えなくなります。今すぐハサミでふたつに切ってください。新しいカードは1週間以内に郵送します」。

 この電話で私が発した言葉は「はい、そうです」、「エッ、そうなんですか」、「アッ、そうですか」しかない。落ち着いてクレジットカード会社の調査部にどれだけの調査権が与えられているのかを聞き返すような余裕もなくなっていた。
 民間会社の調査部が登録していない電話番号に突然電話を掛けてきて、国しか知らないはずの出入国記録を語り始め、ついにはクレジットカードをハサミで切れという。この時以外、こんな想像を絶するような経験をしたことはない。システムが厳重に管理されるようになった今では絶対に起こらないだろう。

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「経営破綻に瀕して約2年間アバディーンに係留されていた『ジャンボ・キングダム』が行き先非公開で曳航されていた途中、嵐のために南シナ海で沈没した」というニュースを知った時、私の脳裏には忌まわしい記憶だけが蘇った。

 今回の海難事故は、どう考えても、解体費用の節約以外のナニモノでもないだろう。運営会社が香港から数百キロ離れた沖合いなら後腐れなくオサラバ出来ると踏んだに違いない。この後、暴風雨による沈没という名目で海難保険を請求するのだろう。

▽そして、私のスキミング体験も海の藻屑と消えた。家族の想い出も水深1000メートルの海底に沈んだ。

▽「なんだかなー」、である。
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[season12/0622/25:00]
夏至』‥一年で一番昼が長い時季。太陽のエネルギーが満ちる頃
photograph:SOUJI-JI/tsurumi, yokohama city
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