∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ サハリンⅡとボルシチ ≡≡

奪い取ろうとする国が失った伝統

 ロシア、イギリス、日本が共同開発していた天然ガスプロジェクトについて、事業主体をロシア企業に変更するように命じる大統領令が出た。
 今年3月、ウクライナ関連の制裁に対してのロシアによる報復措置が始まってすぐにイギリスのShell社は撤退を決めていたが、日本の商社2社は報復措置が出るのは風前の灯火と覚悟を決めながらも、株主として留まっていた。あれから3カ月。ロシアはとうとう「出て行け」と言い始めたのだ
 これまで2つの商社が投下してきた資金も、供給されてきた天然ガス資源もすべてが一瞬にして水泡と化したと言っても言い過ぎではないだろう。

 一方、世界無形文化遺産候補をユネスコ総会に推薦する専門委員会は、昨年12月ウクライナから出されていた「ボルシチウクライナ無形文化遺産」という案件を推薦する決定を下した。
 16世紀にキーフでボルシチを食べたという史実を下にしたもので、ロシアに伝わったのはそれ以降だというのに、世界中でボルシチがロシア料理だと勘違いされているのを正そうとしたウクライナ政府の申請が通ったわけだ。
 日本でも無形文化遺産として「和食」や「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」などが登録されているが、ユネスコ総会で正式に承認されれば、ボルシチもその仲間入りをする。これでボルシチはロシアや東ヨーロッパ諸国の料理ではなくウクライナの伝統料理ということになる。

 戦争は人々に悲惨かつ不必要な経験を押し付けるものだが、それだけではなく、資産を食いつぶしたり、奪い合ったりするものでもある。

 天然ガスプロジェクトとボルシチの間には何の関連もなさそうだが、両者とも、戦争さえなければ共有出来ていたはずだ。しかし、ロシアは資産確保にやっきになっている一方で、自国のものと信じてきた伝統料理に関するオリジナリティを失った。

 プーチン大統領ロシア帝国の威光とソビエト連邦の栄光を取り戻そうとしているようだが、足掻けば足掻くほど、ロシアを衰退させているようだ。そろそろ理性を取り戻して、過去の栄光を追い求めることに終止符を打つ決断をすべきではないだろうか。
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[season12/0701/24:50]
夏至』‥一年で一番昼が長い時季。太陽のエネルギーが満ちる頃
photograph:SOUJI-JI/tsurumi, yokohama city
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