この続きはコーヒーと一緒に

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

都心の桜の紅葉の下で

【桜の一年】


 勢いのなくなったくすんだ緑色から少し濃い目の黄色へ、そして深い紅色へ。一気に黄色く色づく銀杏とは違い桜は紅葉でも楽しませてくれます。


 春には淡いピンク色の花が咲き、ライトグリーンの若葉が芽吹く。
 夏になると深い緑の葉が暑い陽射しを和らげてくれる。
 秋には濃黄色から濃紅色へと紅葉が変化し、晩秋の青空に彩りのアクセントを創り出す。
 そして、冬には焦げ茶色の幹と浅い茶色の枝だけが寒風のなかじっと耐えている。


 長く続いた公園整備が終わった上野公園の桜も紅葉の最高潮を迎えています。それは、まるで今年最後の舞台を勤めているかのよう。
 そんな桜の下にはアコーディオンで『枯葉』を奏でる大道芸人の女性が。スロージャズに仕立てたサウンドに魅了された人々が彼女の周囲を取り囲んでいます。
 一方、不忍池周辺では落ち葉が池にハラハラと落ちていきます。池に浮かぶ落ち葉はまるで北の国から渡って来た鴨たちの安らぎのパスポート。落ち葉をチョンと押しながらノンビリと泳いでいきます。


 あと一週間もすると紅葉は落ち葉となり、公園は茶色のじゅうたんで敷き詰められるはず。歩くたびにザワザワ、ザクザクと冬の始まりを伝える音色が聞こえてくるでしょう。
 しかし、こんな時期から、やせ細った枝の中で来年の春に向けて花の核が創られはじめているはず。美しい花を咲かせて人々を魅了するために密かに開花の準備を整えています。


 晩秋から初冬へと移り変わる日曜日。上野公園の桜を愛でながら、秋の終演を楽しみつつ春への期待を膨らませてしまいました。そして同時に、時の流れと生き方という哲学的なことまで思いを馳せてしまいました。


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