【日本ラグビーの波乱万丈】
20数年前の冬、僕は仕事でシドニーに2週間ほど滞在していました。
あと数時間でラグビーのテストマッチが行われる予定というスタジアム近くで仕事をしていた時、なんと日本のラグビーチームが通りかかったんです。声を掛けようとしたところ、どうもジャマをしていたようで、鋭い視線を浴びてしまいました。そしてその後、ヨットハーバーでは数人のヨットマンから日本人と判っただけで大笑いされました。
おかしいなと感じていたところ、現地の人から「日本での評価とこちらでの評判にはかなり差があるからね。どうせ勝つなら一軍と戦わないとね」と言われてしまいました。どうも日本で伝えられていた対ニュージーランド戦の報道が正確でなかったため、僕たちと現地の人たちの評価に大きなギャップが生じていたのが原因だったようです。この時以来、僕は日本ラグビーに失意を抱くことになり、つい先日までそのように評価していました。
ハッキリ言いますが、彼らは「実力の伴わない大男たち」でしかなかったのです。
そんな評価が今回のラグビーのワールドカップで180度変わりました。お見事。予選ラウンドで終わったとはいえ、各国のトッププレーヤーと戦って4戦中、3勝1敗なんて信じられないほど素晴らしい快挙です。
僕が日本は変わったと実感したのはサモア戦。スクラムで押し込み、認定トライをもぎ取った瞬間「これは本物だ」と快哉を叫んでいました。あの重量フォワードで有名なサモアを日本が押し込むなんて、想像も出来なかったことが起こったのですから。
日本がまったく違ったチームになった背景には、ヘッドコーチの力量やラガーマンの地力があったからと言われているようですが、僕は「現存のチームを成長させようとする意識」より「地力のあるプレーヤーや世界中で埋もれていたラガーマンをしごきにしごいて、まったく新しいチームを作りだす意識」のほうが圧倒的に強かったのだと思っています。今の日本の代表チームは今までの流れを断ち切ったからこそ作り出されたと言ってもいいでしょう。
おめでとうございます。本当に素晴らしい成果です。同時に、これまでのトレーニングやメソッドで育ったラガーマンには絶対に真似の出来ないことだとも確信しています。
4年間の努力が実り、世界的に「戦うべき対戦相手」として認められる存在になったからには、これからのことが心配です。ヘッドコーチが変わっても今の実力を維持したり、上昇させることができるのでしょうか。よくトレーニングの質は現場より団体を運営する人たちの考え方によって変わると言われます。
よく知らないまま書いてしまうのも失礼な話ですが、僕は、20数年前にシドニーで出会ったラガーマンたちが協会の中軸を担っているのではないかと想像しています。もしそうであれば、その方たちにはヘッドコーチを招聘したあとは、現場からできるだけ離れていてほしいのです。実力だけで真の強さを表現する人たちだけでまとまらないと、4年後に世界中から失笑を買うことになりかねません。
これからは上昇あるのみ。雑音に惑わされることなく、いっそうのご活躍を願うばかりです。
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