∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

〓〓 高校時代を思い出した “レンガ壁” 〓〓

『GROOVY』by Red Garland trio
1957, Prestige label

 高校時代、私は、それまでラジオ関西で聞いていたアメリカンサウンドを卒業して、本格的なジャズを聞くようになった。いや、取り憑かれてしまったといったほうがいいだろう。休日の午後は三宮や元町のジャズ喫茶で過ごし、夜になればFMやFENでジャズを “貪る” のが日課だったのだ。

 当時、もっともお気に入りだったのは「プレスティージレーベルからリリースされたマイルス・デイヴィス」だった。あの、ハードバップらしいグルービー・サウンドを体現したと言われているシリーズである。
※【グルービー】簡明に言い換え難い用語なのでこのままで許していただきたい。誤解を恐れず、強いて言えば、1950年代風の「かっこいい」とか「イケてる」が近いかもしれない。

 そんな時代、ひとりのピアニストのレコードに出会った。レッド・ガーランドである。多くのジャズファンは「彼がマイルスが創り出したグルービーサウンドを受け継いだ」と語っていたと記憶しているが、私はそれよりも、グルーブ感の根底に息づくソフィスティケートされたエレガンさのほうに魅力を感じていた。
 特に、レンガとコンクリートで作られた壁にタイトル名と演者名を白いチョークで『GROOVY, Red Garland trio, with Paul Chambers, Art Taylor』と書き殴ったレコードには圧倒された。
 マイルス・デイヴィスのセッションメンバーとして活躍していたピアニストと秀逸なベーシストとして歴史に名を残すポール・チェンバースと、ドラムスの名手と言われるアート・テイラーが創り出したサウンドである、駄作であるはずはない。

 そして数十年経った時、私は “グルービーの壁” に出会った。

 モノクロ写真。色褪せたレンガと剥げ落ちた漆喰。風雪に耐えてきたそのレンガ壁は記憶の引き出しから出てきたジャケットと見比べるとまったく違うものだったが、それでも、一瞬にして私を「ジャズに取り憑かれていた高校生」に引き戻してくれた。

 明治時代に建てられたレンガ壁が、私に高校時代を思い出させてくれる。なんとも不思議な出会いである。
≡≡≡≡≡[season14]13:15/Dec.08/2023 -大雪-≡≡≡≡≡
┃AGED WALL STILL ALIVE┃
Residence-wall of Iwasaki, Taito city.
Photographed on Apr.02/2021