∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

小雨降る夜と「とんかついもや」の関係

【春雨じゃ濡れていこうのはずが】

 午後からずっと神田三崎町界隈のビルの一室にこもっていました。ブラインドも閉まっていたし、外の音も殆ど入ってこないし。室内は異常なほど静かなのに、外がどうなっているかどうかがまったく判らない状況です。

 そして早い夜。仕事が終わって外へ出て、予想外の展開にウンザリ。なんと雨が降っているじゃないですか。小雨のため、傘を買うほどでもないし、かといってこのままでは濡れてしまうし。一瞬どうしようかと悩みましたが、結局、濡れて行くことに。二週間ほど前と比べれば寒さも和らいできたし、駅も近いことだし。ちょっと気が早いけれど「春雨じゃ濡れていこう」とシャレるのもいいかなと思ってしまったのです。
 ですが、このシャレっけがいけなかったようです。濡れたくないし、お腹も減ったしなあと信号待ちをしている間にふと目の前を見ると「とんかついもや」の看板が。数十年前から神田三崎町から神保町にかけて、安くて早くて上手い「とんかつ」と言えばココと信じている僕にとっては無碍に通り過ぎることができないお店です。ということで、当然のように白木の引き戸を開けて入りました。

 入ると「いらっしゃいませ」の声に被せるように「とんかつですか?」の声が。以前から、この言葉が聞こえた瞬間に「とんかつ」か「ヒレカツ」かどちらかを注文するのがココ流でした。もちろん席につく前です。今でも変わってないんだと思いながら、「とんかつ!」と大声で注文しました。その時点ではすでに座るべきカウンター席の前にはお茶が置かれています。そして待つこと数分。出汁の効いたしじみ汁とご飯に続いて、出てきました。衣はカリッと、肉はシットリと絶妙な揚げ具合の「とんかつ」が大量のキャベツに乗っかって。ソースをドバっとかけた後は、喫茶店でよく使われる砂糖入れに入った辛子をスプーンでひとすくい。
 あとは静かに急いで、隣に座ったお客さんに迷惑をかけないように食べる。メシの食い方はこうあるべきだという見本のような食べ方がこのお店には似合います。僕も黙々と「早とんかつ」で食べました。
 久しぶりに入りましたが、これほど「ずっと変わらない店」が当たり前のように生き続けている街にいると独特のパワーを貰えるような気がしてきます。これからは、九段下に引っ越した天丼屋と同様、このお店にも顔を出すようにします。

 そして、外へ。結局雨は止みませんでした。でも春雨が心地よく感じるようになっていました。ひょっとすると久々の「とんかつ」のおかげかもしれません。

 ということで。明日が素晴らしい一日になりますように。今晩も気持ちよく眠れそうです。

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