【九州新幹線開通】
5年前の3月12日。東日本大震災に襲われてから一日。この日からテレビではCMの数が激減していました。そんななかで1本のCMが突然飛び込んできてビックリしました。九州新幹線開通を祝うCMでした。
ボン、ボン、ボーン、ボッボボ。マイヤヒラサワが歌うリズミカルな楽曲をバックに、新幹線沿線を多くの人が埋め、列車の通過に合わせて左から右へウェーブが続き、その情景を捉え続けた列車が最後には福岡に到着するというものでした。
このCMを見た瞬間、僕は地震や津波の被害を忘れ、本心からこう思いました。「オオッ、スゴイ。こんなこと、できるんだ」。
ところが、次の日だったでしょうか、この未曾有の大災害のなか、お祝いごとは控えたほうがという判断があったのでしょう、オンエアーは中止されました。
やっぱり、中止か。今は仕方ないなと納得はしましたが、同時にあの歌声が聞こえなくなることや、登場された地元の皆さんの笑顔が見れなくなるのは、時期が時期だとはいえ、残念でした。中止が決まった後すぐにユーチューブにアップされたので、見ようと思えば見れましたが、やはりテレビから流れるCMとはひと味違います。CMではなく作品になってしまったわけです。
その後、この作品はカンヌ国際広告賞で金賞を獲得、実力にお墨付きが与えられましたが、タイミングを逸したCMが放送されるのはニュースのなかだけ。結局1日だけの「ビッグウェーブ」になってしまいました。
改めまして。九州新幹線開業5周年、おめでとうございます。あの作品創りに参加尽力された皆さんに拍手を送りたいと思います。たった数分間でしたが、日本の社会がどん底まで落ち込んでしまった時でしたが、このCMを見ていた時間だけは「今だけでも素晴らしい時を過ごしている」と実感させていただきました。
そこで、JR九州や地元の皆さんにお願いがあります。あの時の映像を思い出させてくれるようなCMをもう一度作っていただけないでしょうか。何かに参加したり、何かを表現したりという、ある種人間がもつ根源的な喜びが凝縮された映像を見たいんです。登場された人々まで同じであれば、風景の移り変わりだけでなく、10年間の人の歴史まで感じることができると思っています。
ということで。明日が素晴らしい一日になりますように。おやすみなさい。
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