僕にとって秋は上野公園に黄色の絨毯が敷き詰められた時に終わるんだ。
朝の上野公園、特に、芸大や奏楽堂から噴水に向かう坂道にイチョウの落葉が敷き詰められたところをザワッザワッという足音を立てながら歩いていると、秋が終わって、すぐそこまで冬が来てるんだなって思うんだ。一年に一日か二日は「黄色のトンネル」を抜けていくっていう贅沢も楽しませてもらってる。
公園を管理している人たちが毎日綺麗に掃除してくれるから昼にはなくなっていると思うんだけど、それでも一週間か10日間くらいは楽しめんだ。
ところで、オータム・リーブスってジャズの名曲、知ってる。初めて聞いたのがマイルス・デイビスの『サムシング・エルス』だったか、ウイントン・ケリーの『ウイントン・ケリー』だったか、ビル・エバンスの『ポートレイト・イン・ジャズ』だったか、すっかり忘れてしまったけれど、とにかくドラマチックでロマンチックな楽曲だなあって感じたことを覚えている。
でも今、聞くともっと深いんだよね。積み重ねてきて、それなりに円熟した人生そのものを感じたり、ゆったりと過ぎていく心象風景が思い浮かんだり。音楽だけじゃなく、表現物って年齢とともに見方が変わっていく。表現物は見ているようで、本当は自分自身を見ているんだな、結局、自分自身が一番身近な表現物でもあるんだな、なんて思うようになってきたね。
ところで、上野公園だけど、春の終わりはピンクのトンネル、夏はグリーンのテント。これを楽しみにしているとあの公園の楽しみ方が変わってくると思うよ。