冬が来る前の小休止、のはずが
昨日今日、東京は晩秋とは思えないような暖かく過ごしやすい日が続いた。
まさに小春日和の日々。本格的な冬がやってくる前の小休止とばかり午後のひとときを上野公園で紅葉を愛でることに費やしていた私は、学生時代に疑問を抱いたままになっていたあることを思い出した。
日本では、のどかで平和な気分に浸れる晩秋の一日を小春日和というが、アメリカではネイティブ・アメリカンがヨーロッパからやってきた入植者たちに奪われた先祖伝来の地を取り戻すための好機とされていたことからインディアンサマー(Indian summer)と表現されるようになったという。
つまり、晩秋に降り積もった雪が溶けて地面がどろどろになって足跡が分からなくなるため、白人たちからの反撃を避けられる時期がある。ネイティブ・アメリカンはそんな時期を好機と捉えて攻撃を仕掛けたという。そんな戦術を知った入植者である白人は、いわば要注意日としてこの言葉を定着させたということのようなのだ。
日本ではのどかな気分で過ごせる好日だが、英語を母国語とするアメリカ人は脅威を感じる日と捉えている。しかし、黒人ジャズ・シンガーの金字塔、エラ・フィッツジェラルドが歌ったことで有名になったスタンダードナンバーIndian Summerは夏の日の恋に未練を抱く女性の恋心を表現した失恋の歌。同じ気候でも立場によって捉え方はまるで違っている。
開拓時代から敵対することが日常の一部になっていた人々と、争いよりも季節感を素直に捉え、愛でることに美意識を感じてきた人々。そうかと思うと夏の想い出に浸る人々。人間とはまことに厄介な存在である。
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