∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

不忍池

【蓮の花】


 濃いピンクから淡いピンクまでのグラデーション。大人のこぶしの2倍近い大きさ。大きなフチの帽子のようなグリーンの葉。水面から2メートル近く伸びた茎。
 8月も終わりに近くなった今、不忍池には池一面に今年最後の蓮の花が咲いています。最盛期のように咲き乱れているわけではありませんが、ゆっくりと探していると、ここにもあそこにも。濃いピンクの大きな花が僕の身長より高くなった茎や葉の上にポコンと乗っかるように咲いています。
 池の中に入るわけにもいかず、さすがに花の香りは漂ってもきませんが、遊歩道は葉や茎が醸し出すグリーンの香りで満たされ、上野の夏を香りで演出してくれています。


【お釈迦さま】


 仏教の世界では、お釈迦さまが蓮の花の上で手指を上下に向けて「天上天下唯我独尊」と話されたと言われています。
 大きくて、お椀のような花弁が開く蓮の花を見ていると、「確かにこの大きさならそういうイメージも出てくるだろうな」と思ってしまいます。これが宗教心のある方なら、「釈迦の降臨」なんてことを思われるのでしょうが、僕の場合は4月に行われる「花まつり」の絵を思い浮かべる程度です。
 なにより、不忍池のように花が咲き乱れていると、お釈迦さまだってどの花に立てばいいのか、お迷いになるのではないでしょうか。



【一年間】


 7月から8月は花盛り。11月後半には渡り鳥がやってきて羽を休め、子供を育てるために枯れた蓮の群生を巣にし始める。3月前半には渡り鳥が北国へ帰り、巣にしていた枯れた蓮の茎が取り除かれ、池の周囲で出番を待っている桜の蕾が目立ち始める。4月、池の周囲には桜が咲き乱れ、風に乗って花びらが池を埋め尽くす。5月になると驚くほど大きな鯉が池を悠々と泳ぎまわる。6月、蓮の茎が鯉が泳ぐ水中から徐々に伸びてくる。


 蓮の成長と渡り鳥の来訪で不忍池の一年は過ぎていきます。時折、この池を訪れる僕は「都会の季節感」や「時の流れの永続性」を感じてしまいます。ああ、今年も夏がやってきたとか、こんにちは渡り鳥とか。
 すぐそばにはアメ横があり、いつもザワザワとしている下町の中心地なのに、ここには自然が残っている。それだけで、なんだか、嬉しくなってしまうし、ありがたい。この不忍池に行くと、そんな感覚がフツフツと湧いてくるのです。
 おそらく、あと1週間もすれば、花も終わり、葉や茎が枯れ始め、渡り鳥が来たときに支障ないように準備し始めることでしょう。一年の中で唯一寂しい気分にさせられる季節ですが、それも渡り鳥がやってくるまでのこと。いわば「幕間」といったところでしょうか。
 さあ、僕も「幕間」の間にしっかりと次の準備を整えましょう。正直なところ、きちんとした準備が出来るかどうか不安ばかりですが、ここは「カラ元気」で乗り切ります。


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