∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

大飯が動く(その2)

【いつの日か】


 今回の原発事故は、電力供給に留まらず、日本の生活そのものを変化させるものになりました。
 湯水のごとく使ってきた電力が、実は、計り知れない危険性を秘めたものであるという事実を改めて思い出させたこの事故は、原発カニズムの脆弱さよりも政治や原子力関係者の姿勢や体制がいかに強大な力によって捻じ曲げられた形で創り出されたものだったのかを思い知らされました。


 しかし、その体制や哲学は勢力を弱めただけで、未だに厳然たる勢力を保っています。


 原発で潤う、というよりも、政府からの補助金、電力会社からの寄付金、そこで働く人々が治める地方税など原発で成り立っている市町村には「あるかないか判らない災害」よりも「今の暮らしを守ること」のほうが重要という考え方が見え隠れしています。つまり、あくまでも経済性が主体となった論理展開です。ほかに産業がないから原発を誘致してきた地域としては当然の選択でしょう。


 代替エネルギーとして太陽光、地熱、風力、揚波、シェールガスなどの候補が上がっています。それぞれに長所短所があったり、適切な利用法や地域差などがあるため、まだまだ研究開発が必要でしょう。なにしろ「電力は原発に任せておけばいい。ほかのエネルギーは環境問題解決用の設備でしかない」という常識が代替エネルギーイコール補助電力という図式を創り出してきた答えがここにあります。


 世界で唯一原爆攻撃を受け、世界で最初に大量の放射能被ばく者を出した日本は放射能の危険性を精神的にも学問的にも熟知していたはずです。それでも、原発事故が起こった後に一般庶民は「何も知らなかった」ということを痛いほど思い知らされました。当然、少ない知識を総動員した風評や、知らないからこそ起こるヒステリックな言動が横行しましたが、研究者も政治家も行政も企業も誰もそれを止める術を持ち合わせていないという、情けない事態に陥り今に至っていることは周知の事実でしょう。


 そんな日本で大飯原発は再稼働します。原子力の限界が判った今、次の主力エネルギー源は何になるのかを示す公けの骨太プランもないまま、現存施設の災害対策も計画しかないまま、目先の経済性と社会性だけを追い求めて原発は動き始めます。おそらく、今年中にはこれに続く原発がいくつか出てくるのでしょう。つまり大飯原発の再開は既成事実を作るためにも最重要な課題だったと理解できます。


 今現在、原子力の火がないことには日本の産業も生活も立ち行かないことは誰もが認識していることです。その上で「原発即廃止」と叫ぶのもいいでしょうが意識の高揚だけで現実が伴っていないということは誰もが感じていることだと思います。
 「代わりがないから止められない」という現実を直視しながら次世代の電力模様を世論としてまとめる時期はすぐそこまで来ています。そうでないと混乱と意識の亀裂は広がるばかりではないでしょうか。
 たった一年や二年で将来的なきちんとしたプランが出てくるとは思えません。ある意味、今は電力計画の百花騒乱状態で集約に至らないという時期かもしれません。それでも、そろそろ次のステップに移る時が来ていると感じているのは僕だけではないと確信しています。


[591/1000]