∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

谷根千巡りは“山感覚”で

【谷中にて】


 今日の午後、谷根千界隈をうろうろしていました。どの道も谷中七福神巡りや下町探訪の皆さんでごった返していましたが、初めて来た人間にとっては、狭い道が入り組み、坂道と入り混じり、方向感覚がなくなりそうな谷根千エリアのこと。そこかしこで地図を見あっているグループを見受けられました。
 なかにはスマホでナビをしている人もいらっしゃいましたが、立体感と距離感に現実とのギャップが出やすいデジタルデータのこと、坂道を降りるという実態が捉えられずに街角でウロウロ。ナビを止めて実際の道を見ればすぐ判るだろうにと、ちょっとだけ、冷やかに見てしまいました。
 そんななか、JRのポスターで知ったという年配女性の二人組に声を掛けられました。ちょうど工事中の朝倉彫塑館あたり。狭い道を自転車で通りがかったところに声が掛かったので止まりました。彼女たち、田端の東覚寺さんを起点にいくつかの寺社を巡って、これから大黒天が祀られる護国院経由で不忍池・弁天堂に行きたいのだが電車に乗るにはどうすればいいのかと困っているようでした。
 弁天堂だけなら日暮里から山手線に乗ればいいのですが、途中で大黒様となると歩くのがベスト。穏やかな陽射しが心地よかった今日のこと、「歩いて30分も掛からないので歩かれるといいですよ」と答えたのですが、彼女たちにとってはかなり長距離だったようで、決心するまで少し時間が掛かったようです。それでも、行くことに決めた彼女たちに「道に迷ったら坂道を降りると広い道に出ます。そこまで行けば地下鉄も走っているし、タクシーも捕まりますからね」と話したところ、なんと「エッ、ここは山の上なんですか」との反応。ついさっき、急坂を上がってこの道に入ってきたことを忘れたようです。


 東京の下町はほとんどが平地にあります。しかし谷根千と本郷〜白山だけは山の手丘陵と呼ばれる岡の上に広がっています。このアップダウンのある風景がこのエリアの魅力。浅草や向島では味わえない立体感も情緒のひとつとして味わってほしいのです。そうすれば、主要な道がいくつかの階層になっていることや、そこへ至る坂道の楽しみ方も増えるはずなんです。しかもJRの走る日暮里方向と不忍通方向とで賑やかさや風情がまるで違うということも判ってもらえるはず。
 明日以降、谷根千エリアにいらっしゃる方、どうぞ谷根千の地図は“山の地図”ということを頭の片隅に置いて散策を楽しんでください。坂道を迷いながら散策するという妙味は、ほかでは味わえないものですからね。


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