∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

マーガレット・サッチャー元首相

【リコンストラクションの時代】


 80年代に入った頃、初めて仕事でロンドンに行くことになりました。“英国病”とまで言われていた大不況から脱出しようとしていたイギリスです。79年にマーガレット・サッチャー首相が誕生して、「小さな政府(サッチャリズム)」をはじめとして、国営企業の民営化や大幅な規制緩和など大胆な施策でイギリスを活性化させはじめて間もない頃でした。
 当時、僕は政治にも経済にもあまり興味がありませんでした。しかも、日本はバブル真っただ中。イギリスが不況だということの実感も湧かないまま出発しました。
 そして、現地で不況とはこういうことか、という実態を見せつけられました。リージェント・ストリートやボンド・ストリートのような超有名ブランドが並ぶショッピング・エリア──イギリス流にハイ・ストリートと言った方がいいでしょうか──でさえ、シャッターが降りたり、ファサードに板が張られたりしている店舗(だったところ)がいくつも見受けられ、ショックを受けたものでした。
 その後、1〜2年に一度ロンドンを訪れることになり、今度は初めて行ったときとは逆のショックを受けることになります。行くたびにどんどん“街に活気が戻ってきている”んです。賑やかになっただけでなく、“道行く人それぞれに自信が戻ってきている”ように感じたのです。
 確かに、経済復興の陰で大量の失業者を生み出したり、フォークランド紛争を終息させるために戦時体制になったり、IRAによるテロが激化した時代もありました。しかし、イギリスは確実に復活への道を歩み続けていました。旅行者ながら、訪れるたびに「これが経済復興なんだ」と感じたものです。同時に、好きか嫌いかハッキリ分かれるほど強いリーダーシップがなければこれだけの偉業は成しえないのだとも感じたものでした。


 そんな、元気なイギリス、自信に満ち溢れたイギリスを強烈なリーダーシップで実現させたサッチャー元首相が亡くなりました。


 11年間の首相在位中、その強い意志とリーダーシップから“鉄の女”と言われたサッチャー元首相。リタイアした後、晩年は重度の認知症を患ったとのことですが、彼女が蘇らせたイギリスは今も世界の最重要国として機能しています。
 イギリスでは彼女の死に対し、最大級の敬意を払った国葬が計画されているとのこと。彼女なら当然でしょう。それだけの功績があったのですから。
 一旅行者として恐縮ですが……どうぞ安らかにお休みください、栄光とともに。


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