∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

善光寺御開帳

【江戸の名残り】


 交通機関と言えば自分の足が基本だった江戸時代に、遠く離れた霊験あらたかな寺社を訪ねることは、体力的にも、金銭的にも、安全面からも、一生に一度出来るかどうかの大イベントでした。
 ちょうど今年、式年遷宮を迎える伊勢神宮にお参りするための「伊勢講」もそのひとつ。何年も資金を積み立てて出掛けたと言われています。
 そんな「出掛ける旅」とは逆に、高名な寺のご本尊や秘仏が大都市に出向いてくる「ありがたい行事」もありました。
 出開帳。
 住んでいる街にいながらにして高名な寺のご本尊をお参りできるとあって多くの人々がその「イベント」に集まったと言われています。江戸では成田・新勝寺、信州・善光寺、嵯峨・清涼時などが有名だったとか。
 お参りをした後の縁日、芝居見物なども楽しみのひとつで、お参りよりもエンターテイメントのほうが目的だったとも伝えられています。つまり、今のお祭りや正月のお参りと気持ちは同じ。神仏と遊興が一体化した行事で、ある意味「興業」的な側面もあったようです。


 好天に恵まれた昨日、そんな「江戸の再来」“出開帳”に行ってきました。


 明暦の大火の犠牲者への鎮魂のしるしとして建立され、それ後も関東大震災東京大空襲などで亡くなった多くの方々への祈りの場となってきた両国・回向院。そこに信州長野の善光寺のご本尊や秘仏がいらっしゃるということを知り、是非、お参りせねばと思っていたのです。
 お参りを済ませ、東北大震災犠牲者への鎮魂の署名も済ませ、さてと思ったのですが……。僕が知っていた御開帳と比べると何か足りないような……。
 そう、縁日が立っていないのです。もちろん回向院と善光寺のお札やお守りは手に入りますが、そうではなくて、たとえば綿あめとか、焼きそばとか……。鮎の塩焼きや信州らしい「おやき」まで欲しいとは言いません。お酉さまの鳳神社裏ほど大規模でなくていいんです。故勘三郎が心血を注いだ平成中村座ほど立派な芝居小屋でなくていいんです。少しでもいいから縁日があれば……。


 せっかく「江戸の再来」と楽しみにしていたのに、正直なところ、ちょっと拍子抜け。秘仏や皇女和宮の遺品など、よほどでないと見ることのできない貴重な品々と出会えたことだけで満足するなんてお祭り好きな僕にはできません。なにしろお参り半分、縁日半分が基本ですから。
 これもゴールデンウィークのお楽しみ。次の御開帳を期待します。


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