【巡礼の道】
先日、スペイン北部の大西洋岸の街、サンティアゴ・デ・コンポステーラで重大な列車事故が起こりました。7月24日。
直接的な原因は制限速度の2倍以上のスピードでカーブに突っ込んだからということですが、それよりも僕が気になったのはこの街のことです。
というのも、以前このサンティアゴ・デ・コンポステーラに続く巡礼路の話を聞いたことがあり、それをふと思い出してしまったのです。
イギリスを含むヨーロッパ各地からフランスを経由してピレネー山脈を越え、スペイン北部イベリア海沿いを大西洋岸まで続く巡礼の道の終着地が今回事故が起こったサンティアゴ・デ・コンポステーラでした。
1000年以上前からキリスト教の重要な聖地として捉えられてきた街です。また巡礼路は世界遺産としても登録されています。
新約聖書によると、イエスの使徒であり、使徒ヨハネの兄弟である聖ヤコブの遺体が9世紀にこの地で発見されて以来、ここは聖地としてスペインのみならず多くのキリスト教徒が参る地となりました。青地に黄色で12の星印と12の線を組み合わせた「巡礼の道」を示すサインが巡礼路のそこかしこに設置され、巡礼たちの道しるべになっていることでも有名です。
そして、その終着点に建つカテドラルで行われる年間最大の行事、つまり聖ヤコブの遺体が発見されたとされている日が7月25日。事故が起こった次の日です。
列車で行ったのでは、徒歩か自転車以外許させない正式な巡礼の列に加わることはできませんが、それでも次の日は年に一度のミサが行われる日。この地で過ごそうとした信徒も多かったのではないかと想像してしまいました。
巨大な金属製の籠に入った香が煙と共にかぐわしい香りをカテドラル中に振りまくなか行われるミサを特別な気持ちで待っていた敬虔なキリスト教徒にとって、前日に悲惨な事故が起こるなんて信じられない気持ちだったのではないでしょうか。
きっとミサでは犠牲者のことも特別に祈りがささげられたことでしょう。
それにしても、どうして前日だったのしょう。どうしてこの地だったのでしょう。
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