この続きはコーヒーと一緒に

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

例年荒れる忘年会が

【今年は和やかに】

 ここ数年、認知症を患ってしまった友人夫婦との忘年会兼クリスマスパーティは、彼の自宅で開くようにしています。今年は今日がその日でした。
 介護が必要になって以来、友人を集めたホームパーティを開くことも極端に少なくなり、ご自慢の料理の腕を披露する機会が激減してしまった奥様も、この日が来ることを楽しみにされているようです。
 しかし、この日は彼がアルコールを口にする日でもあります。今日はスパークリングワインでした。ちなみにメニューは、数種類のピンチョスやエビのアヒージョからはじまる「おつまみ系」でした。

 彼は飲むといつも以上に症状が目立つようになります。それも、暴力的な方向へ。昨年は、ケーキを食べる前に突然怒り出しました。その直後、あっという間に大声で叫びながら外に飛び出して、自宅の前でウロウロ。数分後帰ってきたと思ったら、何かを訴えるように叫びながらパジャマに着替え、そのまま寝てしまいました。
 奥様からは「アルコールが入るとああなるのよ」と諦めているような独り言が。「ケーキがあるから食べようよ」と彼に話しかけましたが、彼の認識の中からは食事もケーキも、もちろん僕も消えてしまったようでした。

 そんな去年の出来事を思い出しながらの忘年会でした。ちょっと心配でしたが、今年も決行です。そして今年もスパークリングワインでした。栓を自分で開け、グビグビと。約10分でボトルの1/3程度を飲んでしまい、確実に危険が迫っているのが判りました。「これは危ない」と、奥様とふたりで飲み過ぎを止め、水のグラスを用意。少し時間を置いてもらうことに。
 この作戦が功を制したのでしょうか。最後まで積極的に会話に参加し、にこやかにケーキを食べてくれました。食べ終わった途端、寝ますのひと言でパジャマに着替えていましたが。
 最後まで付き合ってくれたことだけで今日の忘年会は成功です。もちろん、僕も心から楽しめました。きっと彼も楽しかったはずです。奥様も満足そうでした。来年も同じようなスタイルで忘年会ができることを願いながら「お開き」。
 これでいいんです。穏やかで和やかな夜が過ごせれば。
 彼が寝るのを待って僕もおいとましました。寒い夜なのに心の中はあったかくなっていました。

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