∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

知っていて損はない祭の三題噺+おまけ

【知ってて損はない「どうでもいい話」】

 5月〜6月という夏が来る直前に行われるのが東京下町の祭です。
 一般的に「お祭り」は農業や漁業にまつわる時間で行われるものが多いのですが、江戸の町人が主体になっている東京下町の祭は肌寒い時期でも暑い盛りでもないこの時期に集中して行われることがほとんどです。
 そんな江戸の町人気質が今に残っている祭ですが、地元の氏子しか知らないこともいくつかあるようです。お節介な話ですが、三社祭を例に取った「知っていても損はない・どうでもいい話」に付き合ってください。

……………

〈半纏〉
 神輿の担ぎ手にはダボシャツとパッチという一般人もいれば、ふんどし一丁という人もいます。しかし半纏だけは必ず決められたものを着ています。
 たとえば関東の総鎮守という矜持を示すために「何物にも染まっていない」白装束で担ぐ神田明神隅田川(大川)の漁師が三体のご神体を引き上げたことを縁として三張の網と町会名を染め抜いた三社祭と言った具合です。
 その三社祭の半纏には町会毎にエンジ、緑、藍の三色があります。
 「エンジ」は一歩離れた所から神輿の渡御を見守る町会の役員です。
 「緑」は神輿のそばで担ぎ手への強い指示をはじめ、神輿が落ちそうになれば身を挺して神輿を守る町会青年部。
 「藍」は町会の若い衆と神輿愛好会と言った具合。
 この三種類以外に、祭の舞台を整えてくれる黒字に赤と白の指し色が入った長半纏を羽織っている町内トビの皆さんもいらっしゃいます。
 ちなみに、緑の半纏をまとった青年部の指示に従わない場合には神輿から引っこ抜かれて文句を言うなんて無粋なことはご法度。もちろん、見物している人にも目を配っています。
 「祭」という字が染められた半纏姿で出掛けても環境客か幼稚園児としか見られないのでご注意を。

〈ビールと日本酒〉
 祭には酒がつきものですが、神輿を担ぎ終わってすぐにビールが飲める担ぎ手はあまり担いでいなかった人と見ていいでしょう。ほてり過ぎた身体に炭酸を入れると胃が急に膨張することを知っている担ぎ手や周囲の人は必ず日本酒を勧めるはずです。
 ちなみに、常温の水で体温を下げてからでないとビールには手を出さないという担ぎ手もいます。胃が痛くなると飲めるものも飲めなくなりますからね。

〈そら豆〉
 古くから浅草に住んでいる氏子衆は三社祭が終わるまで酒のつまみに「枝豆」は食べないと言われています。代わりに食べるのは「そら豆」です。空に向かって伸びている収穫直前のそら豆の姿から「天を突く」とか「天に向かう」という験担ぎで祭を迎えようという縁起モノです。もし祭見物のあと浅草で一杯ということになったら、ぜひそら豆を。「とりあえず、そら豆」と注文するだけで「知っている人」に近づきます。

三社祭と雨)
 今日のように土砂降りのなかで行われる神田祭の渡御は珍しいと思いますが、逆に三社祭では雨は当たり前。大川から発見されたご神体が渡御する三社祭には「水」が欠かせないのです。
 しかも雨が降れば担ぎ手の火照った身体の体温も下がります。いわば、水シャワーを浴びながら担ぐわけです。体力の消耗が軽減されるのでベテランの担ぎ手なら雨が降ることを待っているはずです。特にご神体が町内を渡御される日曜日は降る確率大と思っていたほうがいいかも。なによりちょっとおもしろいじゃないですか。
 ちなみに、海神様のお祭りとして有名な、真夏に執り行われる、深川八幡宮の「水掛け祭」の水も同じ発想です。
 
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