【思い出と支援】
子供の頃、夏休みが始まる頃になると我が家にもお中元が届いていました。今のように珍しいものやオシャレなものよりも、そうめんや食用油、洗剤など生活に直結したものが主流だった時代です。
ある年、ガラス瓶に入った「みかんジュース」が送られてきました。当時の子供にとっては「粉末ジュース」以外のジュース、それもガラス瓶に入った液体のジュースが世の中に存在するなんて想像もしていなかったのに、突然黄色い液体が送られてきたわけです。
なにしろ初めて見たもので、母から瓶に書いてあることをよく読むように言われた僕は、難しい漢字は飛ばして読める部分だけを読み取り、あとは想像して母に報告しました。
曰く「そのまま飲んでいただいても結構です。もし濃いようなら水で希釈してください」。
そうなんです。日本で初めてのジュースの創成期にはこんな説明が書かれていたのです。
さっそく瓶をよく降ってから王冠を開けて味見したところ、味は濃厚そのもの。水でたっぷりと薄めて飲んだのを覚えています。母も同じような感想だったと思います。
家庭用に普及していた氷冷蔵庫が電気冷蔵庫に変わって数年。「モノを冷やして飲む」という習慣がビールと麦茶以外には定着していなかった当時、僕はぬるい「みかんの汁」にぬるい「水」を混ぜて飲みながら、頭の中には「新しい飲物」「上等」「エライ人」というイメージが飛び交い、興奮してしまったのを覚えています。
それが『ポンジュース』との出会いです。
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あれから約50年。今では愛媛県の代表的な農産物のひとつになったポンジュースを未曾有の危機が襲っているというのをニュースで知りました。
西予市や宇和島市吉田町それぞれのみかん畑の半数近くで土砂崩れが起こり、樹木が流されただけでなく、土壌そのものや潅水設備に大きなダメージを受けたとか。
冬を象徴する果物、みかんが満足な数量出荷出来るのでしょうか。ポンジュース用のみかんも確保できるのでしょうか。
ニュースでは、岡山の桃やぶどうなどの果物、広島の牡蠣や養殖鯛などにも甚大な被害が出ているとか。
東日本大震災のあとのように、これから数年間に渡って日本の食料事情が大きく変化してしまうのではないでしょうか。自然と協調しないことには成り立たない一次産業へのダメージは思った以上に国民生活を直撃するものです。
僕のポンジュース史はともかく、今回の大水害で被害を受けた農家や農作物に対する支援についてもしっかりと寄り添っていかないと日本が日本でなくなるかもしれません。
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