【第二室戸台風のこと】
今回の台風21号の進路や被害状況を見ていて、昭和36年9月に大阪湾沿岸を襲い、神戸もその餌食にした第二室戸台風のことを思い出しました。
もう数十年も前の事なので記憶は不確かですが、我が家では仕事を早退してきた父が懐中電灯やろうそくを準備し、その横で母が避難準備をし、僕と妹は服装を整えて、それぞれの立場で台風の襲来に備えたことを思い出しました。
夜になり、外を見ると辺りは水だらけ。父が畳を剥がして床下を覗こうとすると、畳の下の板、いわゆる荒板が水で浮かんできたのです。つまり「床下浸水」です。
「避難」という発想がなかった当時、我が家も4人で台風が通り過ぎ、水が退いてくれることを待つしか手立てはありませんでした。
きっと、父と母は畳の下には水が来ている中で子供たちを守りながら一睡もしなかったのではないか想像しています。
そして朝。その後移り住むことになる父の実家の裏山が崩れ、家の一部が土砂で埋まってしまったという連絡があり、父と母は我々子供たちを連れて救援に出掛けました。
我々が到着した時にはすでに多くの人たちが土砂を取り除くために格闘していましたが、僕自身は、一体何が起こったのか判らず呆然としていたのを覚えています。
あとで聞いたところ、土砂で埋まったのは祖母の寝室だったとのこと。一人住まいだった祖母は間一髪で逃げたようでした。
当時と比べるとインフラも避難体制も格段に進歩しましたが、自然の脅威が繰り返し襲ってくることに変わりはありません。そして、どれだけ対策を整えても災害は起こり続けています。自然の脅威に直面した時、人間がいかに無力かを知らされることばかりです。
台風21号に襲われた皆さん、どうぞお大事に。気持ちをしっかり持ってくじけずにお過ごしください。
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