さすが上野千鶴子氏
昨日行われた東京大学の入学式で述べられた上野千鶴子東京大学名誉教授及び認定NPO法人 ウィメンズ アクション ネットワーク理事長の祝辞がツイッター上を賑わせています。
氏から直接教えを受けたこともなく親しい存在でもない僕ですが、思わず野次馬根性丸出しで東京大学のホームページに掲載されている祝辞を読んでしまいました。
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若かりし頃、当時は存在してしなかった「女性学」を研究するために、自らその分野を構築し、ジェンダー研究と言われるまでに発展させたことで著名な氏は、社会学的な見地で分析した介護の研究や、「おひとりさま」に視点を置いた福祉問題への研究でも明晰で正鵠を得た発表を行っていらした社会学者です。
ちなみに、気軽に読める『おひとりさま』シリーズがあるかと思えば、東大退官時に出版され、思わず姿勢を正して読んでしまう、福祉介護の世界を鋭い目で見つめた『ケアの社会学』などの出版物。氏の著作は多岐に渡っていますが、どの著作を取ってもすべて社会を鋭く見つめたものばかりです。
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そんな氏が新たな“東大生”に送った祝辞は多岐に渡った切り口を簡潔にまとめたもので、新入生だけではなく、東大の卒業生にも改めて自らを見つめながら聞いてほしいものだったと僕は思っています。
乏しい理解力でその内容をかい摘んでまとめると次のようなことでした。
男女差別が存在する入試や社会の構造。実は東大生を敬遠する目で見ている世間。正解のある勉強で優れた成績を残してきた人間が東大に入学したことで、正解のない「予測不可能な未知の世界」と対峙する機会を与えられるようになったことが、いかに恵まれたことなのか。多様性を認めることや異文化との摩擦を恐れないこと。年間で500万円程度の国費が東大生の教育に費やされていることも忘れずに語られました。
また、頑張っても報われない環境とそこに置かれてしまった人が痛感する「意欲の冷却効果」も見逃さずに意識し続けることなども述べられていました。
そして「知を生み出す知─メタ知識─を身に付けてほしい」という言葉で祝辞を締め括られています。
「とにかく目出度い」と浮かれることなく、「自分は偉いんだ」と自惚れることなく、「既知のものに甘える」ことを良しとせず。僕は、こんな厳しくも正鵠を得た祝辞を氏から送られた新東大生を羨ましく思っています。
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