この続きはコーヒーと一緒に

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ グーグルマップ ≡≡

現代版“餅は餅屋”を実践した内製化

 今年の3月中旬、突然グーグルマップが異常な表示をし始めました。SNS上には「道がなくなった」とか「山が海になってしまった」とか「文字が表示されない」とか「地図を提供してきたゼンリンとの契約解消したらしい」といった書き込みが相次ぎ、いったい何が起こったのかと感じたのを覚えています。
 グーグルの目標が判らなかった当初、世界的にも有数の地図メーカーであるゼンリンとの契約を解消するとマップの役割を果たさなくなるじゃないかという危惧も飛び交っていました。

 そして1カ月半。グーグルが地図メーカーとの契約を解消してまですべてを内製化して変更した機能が徐々に判ってくるにつれ、ようやく彼らが目指していたものが見えてきたようです。
 たとえば、不正確な表示をフィードバックすれば数日中に変更されるようになったし、ストリートビューとカメラ機能を組み合わせたAR表示もできるようになったし。機能的には何段階もグレードアップしたように思います。もっとも、ランドマークの表示やや広告が増えすぎているような気もしますが。

……………

 僕は、今回のグーグルマップ内製化を「何かをやるなら、周囲の雑音を気にすることなく、準備を整え、それまでの常識を徹底的に打ち破るものでなければいけない」という鉄則が貫かれたものだと感じています。特に、常に現在進行中が当たり前のIT関連業務では欠かせない姿勢だと改めて確信することが出来ました。

 耳学問で知ったことを企業改革の一環として採用して外部のシステムインテグレータ(SIer)に丸投げ発注したのはいいけれど、自らが理解出来る範囲だけを基準にして、マネジャーはおろか、オペレータにも細かな機能説明をさせなかったために、けっきょく活用できなかったというのはよく聞く話です。もちろん、ユーザーがオペレーションの実態を理解していなかったために起こったシステムエラーやトラブルはすべてSIerに押し付け、自己保身を図るのも日常茶飯事でしょう。しかも、SIer側からの提案は「予算内かつ責任は取らない」という条件付きであるのはいうまでもないはず。なにしろ発注者側の人間の誰もが蔑み、敬遠している業務なんですから。

 ─経営効率の飛躍的な向上を目指したシステムを創り上げる時には、レガシーを打ち破り、人的な環境や企業風土まで変えてしまうくらいでなければいけない─。
 内製化に踏み切ったグーグルマップの劇的な変更は、そんなザ・ニッポン的な思考を嘲笑っているように感じています。
 

「昨日の常識は今日の非常識。デジタルの世界はデジタルを知る人間に聞け」。これこそ現代版“餅は餅屋”ではないでしょうか。

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