数字のマジック
今年の4~7月度の実質GDPが前年度比21.4%上昇したと報道されたが、実感はまったくない。
基本的に、明日何が起こるか分からないというコロナ禍の今、「3カ月という短い期間の上昇率を4倍して年率換算する」という計算方法が的確なのかどうかにも疑問が残る。 規模の小さい中小企業が多く、少しでも状況が変われば破綻は必至、覚悟を決めて維持するだけで精いっぱいという産業が多い中、通販やゲーム、宅配など限定された産業が叩き出した上昇率だけが全体を引っ張っているのではないかとしか思えない。
個人的に実感がないのはもはや慣れっこだが、私の身近にいる“弱小”経営者を見渡しても元気いっぱいという人はひとりもいなくなった。誰も彼もが口にするのは「上昇? いったいどこの話だ」というフレーズである。
従来なら、年率換算で誰もが納得していたが、今はそれを素直に受け止める余裕すらなくなっている。
“数字”は従来と同じ指標でないと比較ができないとする専門家だけのものではない。これまでとは違う指標を考え出して切迫した実体経済を表すこともコロナ禍の責務ではないだろうか。
合言葉は「もう数字のマジックには踊らされない」である。
[1116 - 3662]