∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ Chick Corea Forever ≡≡

 あるジャズマンが亡くなった。チック・コリア。享年79歳。

 私が初めて彼のサウンドを意識したのは『リターン・トゥ・フォーエヴァー』だった。1972年に発表されたチック・コリアクインテット、Return to Foreverの作品である。
 このアルバムがリリースされる2年前、常に新しいジャズの世界を創り出してきたトランペットの巨匠マイルス・デイビスは『ビッチェスブルー』でフュージョンジャズという未知の地平を切り開いたが、そのアルバムでエレクトリック・ピアノを受け持っていたのはチック・コリアだった。
 いわば『リターン・トゥ・フォーエヴァー』は『ビッチェスブルー』の精度を極限まで高めたと言っても差し支えない作品と私は思っている。

 彼が紡ぎ出す透明感のあるエレクトリック・ピアノ、伸びのある高音が空気の中を漂っているようなフローラ・ピュリムの歌声や、ジョー・ファレルのフルート、悪目立ちしないスタンリー・クラークのベースや、アイアート・モレイラのドラムス。
 『ビッチェスブルー』が攻撃的なサウンドだとすれば『リターン・トゥ・フォーエバー』は静かだがエネルギッシュなものだった。

 そのサウンドを知ってから私のジャズに対するイメージは変わったと言ってもいいほど“打ちのめされた”ことを覚えている。違った言い方をすれば、それまでのジャズ・クラシックとの境界線を鮮明にさせた作品だったと言ってもいい。


 1940年代に今ではモダンジャズと呼ばれるようになったビバップサウンドを創り出したチャーリー・パーカー。そのグループでデビューしたマイルス・デイヴィスは50年代にはクール、60年代にはハードバップ、70年代にはクロスオーバー(フュージョン)を創り出した。そして、そのグループで育ったチック・コリアフュージョンの中にフリージャズの要素を取り入れてジャズ史の一部を飾ることになった。

 今頃、チック・コリアは天国でチャーリー・パーカーマイルス・デイヴィスとコンボを組んでいるのだろうか。ひょっとするとジョン・コルトレーンレッド・ガーランドなどのジャズ・ジャイアンツたちも時空を越えて飛び入りでセッションしているかもしれない。

 チック・コリア様。あなたの肉体は天に召されたかもしれないが、創り出したサウンドは永遠に私の心の中で生き続けます。どうぞ安らかに。素晴らしいサウンドをありがとう。

[0212 - 3690]