∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

≡≡ 立ち退き提訴 ≡≡

f:id:Yutaka_TAWARA:20201208151143j:plain

浅草らしさはどこへ行く

 日本で有数の観光地、東京浅草。そこの浅草寺に向かう仲見世通りに交わる伝法院通りに異変が起こっている。

 この通りの一角には舞台衣装、履物、着物小物をはじめとして30店以上並んでいるエリアがある。
 日本人から見ると誰が着るの?いつ着るの?と言いたくなる異様な光沢を放つキモノガウンを扱う店があるかと思うと、ちょっと通ぶって羽織りたくなる角袖や“とんび”などの男性用着物コートの既製品を扱っている店もある。
 ほかでは見ることのない店が並ぶ中に新規開店した食べ歩きの店もあるが、全体の印象としては「古き良き昭和」がワープしてきたようなエリアと言っていい。

 ここに店を構える30数店は、40数年前に区画整理で現在地に移転してきた。仮店舗のような造りのようにも見えるが、夜になればシャッターも閉まるし、東京電力の電力も供給されている。もちろん役所が発行した住居表示もある。

 そんな30数店に、ここを管轄する台東区は立ち退きを求め提訴した。

 当時の区長との間で口約束が交わされたとされてきたが、証拠となる文書が一切保存されておらず、現実問題として公道を占拠していることや、区道上であるにも関わらず40数年間区に専有使用料(地代)を払っていないことなど不法建築とみなすに充分な根拠があるというのが提訴した台東区の言い分である。

 しかし、しかし、しかし、である。

 40数年間地代を払う払わないで揉めることがあるのだろうか。また、不法占拠した建造物に正式な住居表示が取り付けられることはあるのだろうか。どうして東京電力は疑問を抱かずに電力供給し始めたのだろうか。疑問はいくつも浮かんでくる。

 そもそも浅草は、広大な寺社領だった浅草寺の地所に店が持てるのを誇りとしてきた街である。たとえ地所が台東区に移管されて道路整備などをしても、それは“ご奉仕”だと感じている住民も多い。
 しかも「伝法院通り」は「仲見世通り」や「六区の大通り」と「ひさご通り」を結ぶ「通称・ホッピー通り」と共に浅草らしさを醸し出している通りである。

 台東区は浅草らしさとは何かを考えているのだろうか。専有料が納付されなかったという行政の不始末を棚に上げて「そこどけ」「地代を払え」とだけ主張するのだろうか。それとも、伝法院通りに店を構えるほかの老舗などからの圧力に耐えられなかったのだろうか。
 どうして「経緯を証明する文書が何ひとつ残っていないので、これまでのことは不問にするから、これからは専有料を支払ってくれ」という解決策を提示出来なかったんだろう。

 昔気質の住民のなかには「観音さまのお膝元でこんな騒動を起こすなんてバチが当たる」と感じている人も少なからずいるはずだ。

 こうなると、提訴が正式に受理された時に裁判所が住民感情や浅草情緒をどこまで汲み取ってくれるか祈るばかりだ。
_________________________
[season12/0118/25:10]
小寒』‥寒の入り。寒中見舞い。寒気に耐えながら春を待ち望む
photograph:suwa-jinja, nishi-nippori, arakawa-ku
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄