数十年ぶりに仰ぎ見た東京タワー
東京都墨田区押上地区にそびえ立つ“東京スカイツリー”を見続けてはや10年。周囲10数キロの地域なら何処にいても確実に見えるこのタワーも下町に住む人間にとってはすっかり見慣れた風景であり、シンボルになった。
朝焼け、夕焼けの茜色が白っぽい銀色のタワーに映えているのを見ると、思わず見とれてしまうのは私だけではないはずだ。
完成当初はジミすぎると感じていた夜のライトアップも慣れるとほどよい光の演舞に見えてくるから不思議なものだ。
と、感じている私だが、今日は東京タワーを仰ぎ見ることになった。それも雲ひとつない青空をバックにしてである。
最初は「オオッ、東京タワーも捨てたもんじゃないな」と感じていたのだが、しばらく眺めているうちに、妙な清々しさを感じはじめ、ついには白と赤に色分けられた細長い四角錐ほど威風堂々としたものはないと感激してしまった。
近くで見ると、高さは低いがその存在感はスカイツリーと同様かそれ以上。東京タワーがいまだに東京を代表するアイコンになっている理由も分かったような気になった。
東京下町の平坦な土地に建設され、周囲から“丸見え”のスカイツリーに対して、東京タワーは思いのほか起伏のある場所に立っている。離れた場所から見た時の存在感の違いはこの立地条件が生み出したものというような気がする。
スカイツリー建設が決まった時、東京タワーが解体されるのではという憶測が飛んだようだが、そんな悲劇が起こらなくて本当によかった。
深夜になって思い返してみると、スカイツリーを見過ぎている私にとって今日の出会いは“小さな小さな東京観光”だったのかもしれない。
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[season12/0905/25:10]
『処暑』‥酷暑が峠を越す頃。二百十日。台風シーズン到来。
photograph:matsuchiyama-shoden, taito city
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