∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

江戸切子のシャープなデザインが好き

透明ガラスに色ガラスを被せ、カットを入れていく切子には薩摩切子と江戸切子の2種類がある。特に薩摩切子は江戸時代から清国をはじめヨーロッパにも輸出され高い評価を得ていた。確かに、キリッと切り込んだカットと、色ガラスが徐々に淡くなっていくグラデーションの見事さはなにものも敵わない素晴らしいものである。特に、透明+黄色+藍、三重に被せたガラスにカットとグラデーションで文様を入れたものや、色ガラスだけに浅いカットを入れて深いカットと合わせたデザインの秀逸さは他の追随を許さない美の世界と言っても過言ではないだろう。カットグラスとしては世界最高と言ってもいいと確信している。
もともと、江戸のガラス職人が薩摩に呼ばれ、ボヘミアや乾隆ガラスのワザも参考にしながら、ここまで見事なものに育て上げた島津家や多くの職人には頭が下がるばかりである。
しかし、僕は江戸切子が好きなのだ。
本来の江戸切子は透明ガラスにカッティングを施したものだったらしいが、今では2色〜3色の色ガラスを被せたものが主流になっている。特徴は何と言ってもシャープでキリッとしたカッティング。江戸小紋と同様、江戸のさっぱりとしているが「技好み」の気風を今に伝えるもののひとつといってもいいだろう。
この江戸切子、使っていて飽きないところがいいのだ。薩摩が観賞用に適しているのに対して、江戸は「用の美」に溢れている。日本酒でなくても、クリア系の炭酸飲料でもいい。飲んでいて気持ちがいいのだ。特に含有する鉛の割合が高いクリスタルのそれは手に持った時の存在感、指に伝わってくるカットのリズム、どれを取っても心地よい。
東京江東区錦糸町から亀戸あたりの小さな工房で誕生する逸品工芸品、江戸切子。市場シェアとしては、海外のグラスに圧倒的な差を付けられてしまったこの名品、もう少し「陽の当たる場所」で活躍してほしいモノの一つである。
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