∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

渡り鳥と不忍池

浮世絵の題材や落語の舞台にもなった上野の不忍池は東京23区の中で最も大きな池で、あのアメ横まで歩いて5分という大都会の中の自然エリアである。ちなみに池の一部は上野動物園の敷地内に取り込まれている。
もともとは広大な寛永寺の敷地の中に琵琶湖に似せた形に作られた池で、中ノ島には弁天堂が作られた。
池が今よりも大きかった明治時代には池の周回コースを走る競馬場が出来たり、日本で始めての駅伝レースが行われたという。
そして現在は春は桜、夏は蓮(ハス)の名所として知られていることはいうまでもない。
しかし、渡り鳥の生息地ということは意外と知られていない。個人的な感想だが、数年前と比べると飛来する渡り鳥が減ったような気もするが、それでもカモやハジロの仲間を中心に10種類以上の鳥たちがシベリヤから飛来し、桜が咲く少し前に帰っていく。
ちなみに、ユリカモメは夜が明けると東京湾にエサを探しに飛んでいくらしい。また、オオイサギのように、飛来してきたものとは別に、動物園のオープンケイジで飼育されているものが遊びに来ているケースもある。
ここ数年、渡り鳥が鳥インフルエンザのウイルスを運んでくると言われるようになり、渡り鳥たちには分が悪いが、不忍池の冬の歳時記として渡り鳥たちは欠かせない存在である。
実は、秋口に池の東半分全体に広がった蓮が枯れてしまってもそのままになっている。なぜ綺麗にしないのかと疑問に思う人たちも多いが、枯れた蓮の茎が渡り鳥やその子供たちの安全な自然の棲み家となるように残してあるのだ。
渡り鳥が北へ帰って行くのに従い、毎年2月後半から徐々に枯れ草は清掃され、桜が咲く頃にはすっかり綺麗になる。つまり、巣の範囲を狭めていくわけだ。それは同時に地元の人間にとって「本格的な春到来」を知らせる行事にもなっている。
11月に渡ってきた時、小さかった渡り鳥の子供たちも今ではすっかり大きくなった。もう少しで渡り鳥は帰っていくだろう。冬を楽しませてくれた鳥たちの仕草を見たりエサをあげたりできるのもあと1ヶ月ほど。
大都会の中で冬の自然の歳時記を満喫したあとは、春本番の到来である。
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