∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

駅構内

◇上野から京成本線に乗り、最初の駅、日暮里に着くまでのトンネル内に、今では使われていない駅がある。
今でもホームは当時のまま残されているので、上野を出発して1〜2分後に、車内からガラス越しに目を凝らして見ているとボンヤリと見えるので、沿線の人ならよくご存知のことと思う。
僕は30数年前に乗り降りした記憶がある程度なのだが、確か駅名は「博物館動物園前」と言った。
国立博物館のすぐ近くに石造りの重厚な地上出口があり、ホームの壁は白いタイル張りだった。
どこかパリっぽい雰囲気を醸す駅なのに、トンネル内ということもあったと思うが、薄暗く、湿気があり、少し音が反響する不思議な駅だった。
東京芸術大学のすぐそばということもあってか、数年前には、駅構内で美術展を開催していたと記憶している。
現在、駅の入口は閉ざされているが、空気抜きの穴からは京成線が通る音が今でも聞こえてくる。
◇実は今日、千代田線のある駅のホームでフッとこの駅のことを思い出した。何故だろう。どう考えても似通ったところはないはずなのに、と思いつつホームを見渡してみると、共通点があった。ホームが暗いのである。
計画停電協力のための節電でホームの照明を落としているため、どこか20年ほど前に使われなくなった「博物館動物園駅」の印象があったのだろう。
◇つまり、今の地下鉄の照明は30数年前レベルに戻ってるわけだ。
◇当時はあの明るさで充分だった。もともと、東京の夜は、ほかの都市と比べ「昼間のように明るかった」のだが、それでも、今ほど明るくなかった。当然、主要駅以外の駅のホームは薄暗かった。
計画停電という前代未聞の電力削減のおかげで、昔の姿を思い出したような気がする。同時にロンドンやニューヨークの地下鉄の薄暗さも思い出した。
このままでいいのではないだろうか。これを機会に必要以上の明るさはカットすれば。
もちろん、明るくするための「ベタ明り」から、暗さと明るさのコントラストが印象的になるような照明計画も必要になるだろうが、それも一考ではないだろうか。ドラマチックだったり、ロマンチックだったりする照明計画で駅を演出する。このほうが「味」が出ると思うのだが。
◇犯罪防止を旗印にした、明るさ追求の時代は終わったような気がする。ほかにも繁栄へのベクトルの中で置き去りにし、失ってしまった「何か」をもう一度探し出す時代が来たようだ。
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