∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

幸運な一日

◇今日はいい日だった。偶然、ずっと探していた8冊揃いの全集が見つかったのだ。
 桜も咲き、陽の光もキラキラと輝いていた今日、本郷あたりを自転車でユルユルと走っていたら、チラッと視界に入ったものがあった。
◇いつも走っているルートなのに、これまで、まったく気付かなかった古書店の店頭に「あの本」が無造作に置いてあった。アレッ。自転車を降りてもう一度確認してみると、やっぱりそうだ。それも全冊揃いだ。しかも、考えていたよりもずっと安い値段だし、コンディションも良さそうだ。
 「買おう」。余裕はないけれど「ここで買わないとまた探し回わることになるな」、という飢餓感に似た感情が全身を駆け巡るような不思議な気分だった。さっそく古書店の帳場に持っていき、買った。
◇でも、単純に買うだけでは収まらない。なんだか、ようやく出会えた本のことで興奮気味の僕は、嬉しくなって、ご店主に「以前持っていたものを手放した後、また読みたくなって探していたんです」なんてたわいのないないことを言ってしまった。と、どうだ。ご店主もその全集の意味をご存じらしく「古典文学だから何種類も出版されていますが、その全集が一番いいですね」という言葉が返ってきた。「長編だし、登場人物も多いし、ストーリーも複雑だから、皆さんどうやって読んでいらっしゃるのでしょうね」という言葉に僕は「以前、僕はマップを書きながら読みました。今回もそうなると思います」なんて話をしながら20〜30分も話し込んでしまったが、とても楽しくて有意義な時間が、本と同時に舞い込んできたような思いが心の中を駆け巡る。早く帰って読み始めよう。そんな気持ちで古書店を出た。
◇手強いことは分かっている。しかし、以前読んだ時とは自分を取り囲む環境も変わったし、考え方もずいぶん変わったはず。きっと違った読み込み方ができるだろう。きっと新たな発見も多いだろう。まだ一行も読んでいないうちから期待はドンドンと膨らんでいく。
◇出会いというものは、こういうものなのだろう。思いもしなかったところから、突然、ポンと目の前に現れる。もちろん、ずっと思い続け、探し求めること。かといって、ガツガツしても出会いはない。気持ちは前向きに、行動はじっくりと。なんだか本との出会いを通して、人生訓を思い出してしまった。
◇今日はいい日だった。明日も足元を固め、視線は広く。自分を見失うことなく歩いていこう。きっと明日もいい日になる。
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