【昔の僕はスーパークールビズ】
以前、僕が勤めていた出版社では営業関係以外ほとんどがカジュアルウエアで勤務していた。もちろん一年中。きっと今でもそうだと思う。
しかし、どんな格好でもいいというわけではなかった。たったひとつだけ存在したルールを守れなかったら、帰宅してでも、買いに行ってでも守らないとスタッフ全員から総攻撃を受けた。
もちろんスーツで出社してもいい。つまり服装は完全自由。ひとつだけあったルールさえ守れば。
そのルールは……「高価である必要はない。ダサい格好で出社するな。個性的であれ」。
こんな会社で育ったせいか、今回のスーパークールビズは「いまから?」という思いが強い。新入社員の頃は、スーツ一辺倒で汗だくになりながら歩いているビジネスマンと自分を見比べて、僕はビジネスマンじゃないんだなあと、思ったことも多かった。
もちろん、一年もするとそのルールに慣れ、自由形の服装を楽しめるようになった。と同時に、服装が個性だけでなく職業も言い表わすということを身体で感じるようになっていた。そう、日本のサラリーマンって大変だなあ、と人ごとのように思っていたものだ。
【お国柄でフォーマルなスタイルも変わる】
オーストラリアの膝上丈でバニューダショーツを少しゆったりとさせたようなショーツスタイル。フィリピンやタイの白い麻製で白い刺繍や地紋が入った涼しげなシャツスタイル。
今騒がれているスーパークールビズ以上にクールなスタイルをオフィシャルなものにしている国や地域だっていくつもある。日本だって沖縄のかりゆしシャツという素晴らしいものがある。
人間は住んでいる地域の環境に合わせて服をアレンジするという典型的な例だろう。
ところで、 今日のテレビニュースで何度も登場していた「おにぎり顔+ミシュランボディ」で赤いアロハを着ていた環境省職員には、正直なところ、ビックリ&大笑いしてしまったが、あそこまでいくとあの格好でも暑いのではと心配になる。なにも彼が広報役にならなくてもよかったと思うのだが……。あれでは定着するものも定着しないのではと妙な心配までしてしまった。
【スーツ&ネクタイは現代の裃(かみしも)】
どんなにスーパークールビズと言うような提案をしても、スーツとネクタイの組み合わせが、江戸時代の武士が儀礼を尽くして登城する時の服装感を基本にしている日本のビジネスマンにとっては「余計なお世話」ではと考えてしまうのは僕だけだろうか。
さすがにこの夏、ガッチリと着こんで寒いくらいに冷房を効かせた室内で仕事をするほど「空気の読めない」人はいないはず。しかしサムライ精神は変わっていないのだ。だから、カジュアルなファッションセンスなんて磨いてこなかった。こんな状態で、それではどうぞと言われても悩むばかり。 むしろ、ジャケットを脱ぎ、袖をロールアップし、ネクタイを緩め、というラフなスーツスタイル程度でいいじゃないか。あまり騒ぎすぎるほどのことでもないだろう。
無理をして妙なスタイルで仕事をするよりも、慣れた格好を着崩したほうがサマになるのは目に見えている。
サラリーマン諸氏よ。無理するのは仕事だけ。服装で無理をするのはほどほどに、である。
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