∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

伝統工芸ってなんだ

【市井のアーチストたち】


 このところ、思いつくまま「江戸の伝統工芸の今」を見つめ直しています。
 作っているところを想像すると「どうしてこんなに素晴らしいものが出来るんだろう」なんて思ってしまうことばかりです。
 それなのに、そんな見事な作品を作っている職人さんは、周りの人たちまでピリピリしてしまうほど仕事には厳しいけれど、いざ仕事を離れると「親しみやすいお隣のおじさん」だったりすることがほとんど。「お隣りさんが伝統工芸士」なんて街って素晴らしいと思いませんか。
 でも、そんな職人さんたちの仕事って、きちんと評価されてるでしょうか。
 産業としてはマイノリティかもしれませんが、代々の職人さんが受け継いで磨き上げてきたワザはメジャーそのものだと思うのに、世の中には「古い」とか「時代遅れ」とか「仰々しい」とか「使うところがない」という間違った印象が蔓延しているように思ってしまうのです。
 確かにそんなところも、ないわけではないけれど……。でも、単なる「工芸技術」で終わってしまってはいけないと思うのです。
 方法論さえ確立できれば、隣のおじさんのワザで「アートの街」が出現することだって可能だと信じているのですが、さて、どうしたものでしょう。それとも今のままでいいのでしょうか。


【グローバル・ブランドと伝統工芸】


 デザイン性、影響力、マーケティング力。すべてに秀でたフランスやイタリアの一流ブランドは、頂点を極めたワザも貪欲に、彼らの作品の中に取り入れます。たとえ、それが伝統的で閉鎖的なものであろうと、「いいものはいい」という純粋な哲学で自分たちのブランドとのコラボレーションを実現させます。だから、彼らは京都、金沢、福井、和歌山……。いろいろな場所で多くの伝統工芸の職人さんたちの力を借りてコレクションを充実させています。


 ということは、日本の伝統工芸にも実力はあるのです。ただ、出会いとチャンスと認めてくれるキーパーソンに欠けているだけ。そんな気がするのは僕だけでしょうか。


 もちろん、完成度の違いや作品から醸し出されるオーラの強弱はあるでしょう。でも、極めたモノだけがもつ奥行きの深い芸術性をしっかりと見つめることのできる人やブランドは、アートに対して貪欲です。
 芸術が身近で、しかもインテリジェントの証明と考えているヨーロッパのブランドだけが日本の伝統工芸に着目しているって、日本人としては「灯台もと暗し」の状況ではないでしょうか。
 隣のおじさんの作品が世界の工芸シーンにデビュー、なんて素敵だと思いませんか。
 僕もお手伝い出来ればいいのですが、ウーン、それが一番の問題かもしれません。


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