∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

仕事へのプライド

【職人のプライド】


 伝統工芸の職人さんにお会いする時、皆さん、ふたつの顔をお持ちのように感じています。ひとつは仕事から離れたプライベートな時。こんな時はどなたも「素敵なオジサン」だったり、「楽しいオバサン」だったり。皆さん、謙虚で楽しくて、それでいて「うるさがり」だったり、「お節介焼き」だったり、「ちょっと変人」だったりするのです。まさに、お隣りに住むいい人です。
 でも、一旦仕事の話になると人が変わったように厳しい語り口に変わります。視線も強く、キラキラ輝きながらも鋭いものに。簡単には近づけそうにない強烈なオーラも発散されるようになります。
 自分の仕事はこうだ。変な仕事はしたくない。注文する時に真剣勝負で向かってくる人間とはガップリ四つで仕事が出来るけれど、そうでないとこちらも真っ向から仕事に取り組めない。仕事に精進して少しでも「いい仕事」が出来るように自分を磨かないヤツは職人として失格だ。そんな話が出てきます。
 こんな強い意志と仕事へのプライドがあるからこそ、目立たないけれど素晴らしい作品が出来るのだと思います。


【街で見かける「立派な」人】


 ごく稀にですが、やけに周囲を威嚇しながら「オレは偉いんだオーラ」を出している人を見かけます。こんな方はアルコールが入っていても、いなくてもいつでもブイブイなのでしょう。こんな方の周囲には必ず部下というか「お付きの方」がいます。そして、そんなお付きの方も周囲でご機嫌を損ねることが起こらないように必要以上に気を付けていらっしゃいます。視線も厳しいし、よく動いているようです。まるで、周囲からの危険をいち早く察知しようというような感じです。
 でも、そんな方に限って、どこか不自然なのです。全身に力がみなぎっているようだけど、何か想像していなかった出来事が起こると一瞬にして威嚇していたバリアがなくなりそうです。


 実は、もう数十年前になりますが僕が学生だった頃、「その筋の会長」さんと何度かお話ししたことがあります。正直なところ、その方のバックグラウンドを知った時、背筋に寒気が走りましたが、それまでは、目の奥に鋭いものを感じるものの、とても自然体な雰囲気を持った、地位も資産もある方としか思えませんでした。
 なるほど。本当の実力がある人はこうなんだ、とその時初めて知ったわけです。
 そして今では、こんな「自然体だけどピリピリした緊張感が伝わってくる人」が企業のオーナー経営者に多いことも知りました。


【プライドと威嚇】


 いつもは「気さくないい人」だけど、仕事になると人が変わったように厳しくなる方がいます。周囲を威嚇しながら生きている方もいます。かと思うと、自然体なのに決断の時には周囲を圧倒するパワーを発散する方もいらっしゃいます。
 こと仕事に関して言えば、その時の地位でしか自分を表現できない方と、しっかりとした実力があり、余計なことや周囲で起こる雑音には振り回されない強い意志を持った方の違いではないか、なんて僕は考えています。
 こんなところにも「愛すべき職人」の姿があるのでは、なんてことも考えています。もちろん、そんこまでいくのに、どれだけのご苦労があったのか知りようもありませんが、きっと話すこともおこがましいような修羅場を越えてこられたのではと想像していますが。


 手ワザであり、信念であり、真の実力を持った人だけが醸し出す自然なスタンスと真摯な取り組み。僕もこんな「真の実力」を持った人間になりたいとは思いますが……。なにしろ、根がヤワに出来ているもので、そうはいきそうにありません。せめて、目標にするくらいのもので。
 

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