∞∞この続きはコーヒーと一緒に∞∞

その日その時、感じたことを感じたままに。まるで誰かと語り合うコーヒーブレイクのように。

下町の定食屋さん

【京成町屋駅徒歩1分】


 町屋というと、東京の下町の中でも“超”が付きそうなくらいの下町です。台東区墨田区のように広い道路が碁盤の目のように作られている街とは違い、狭い道が斜めに入り組み、慣れないと迷ってしまい、同じ道をグルグル回り続けてしまいそうなエリアです。
 実は僕、このところ町屋を攻略しようと出かけることが多くなりました。まだこの街が「自分エリア」になっていないため、メインストリートの「お竹橋通り」を中心に広がっている細い道を一本ずつウロウロしながら「おいしそうかな」とか「何の店かな」とか「ここは安いね」とか「オッ都電だ」なんて感じつつ“自転車”で歩いています。早い話が下町に入り込んだおのぼりさんです。


 そんな街歩きの途中、とんでもない定食屋さんを発見しました。


 もちろん、町屋のことを何も知らない僕が発見しただけで、地元の人にとってはいつもの定食屋さんなのですが。
 定食屋好きの僕は、どんな街でも定食屋チェックは欠かさないのですが、ここで見つけた「ときわ食堂」さんほどのお店はあまり見かけたことはありません。
 実はこのお店、ロケーションは最悪。京成町屋の改札を出て、町屋斎場のある寂しい方、つまり、人も車も通行量の多い尾竹橋通りとは正反対のひっそりとしたエリアです。徒歩1分なので、慣れれば平気ですが、それまでは……。
 しかも、店頭は「うら寂れた」定食屋さんそのもの。知らない人は入るのをためらって当然という作りなのです。
 定食屋さんとはいっても居酒屋として利用する人と、ファミリー・レストランの代わりに利用する家族連れと、僕のように定食を貪り食う「おひとりさま」が入り混じっているのもここの特徴といっていいでしょう。


【膨大なメニュー】


 ボリュームで勝負する恵比寿や高田馬場。デミグラスソースで競う浅草や千束。老舗中心で頑張る市ヶ谷近辺。煮物や魚が狙いどころの根津や千駄木。意外と定食屋さんには地域性があるようなのですが、では、この町屋はというと、数件のお店が安さと自慢の一品が人気のバロメータになっているようです。
 で、この「ときわ食堂」の場合。
 まず席数は80席程度。かなり大きな食堂です。おかみさんは元気いっぱい。いつもハイキーな大声で迎えてくれます。
 そしてメニューは。正直なところ数えきれません。刺身、煮魚、焼魚だけで20種類は優に越えているでしょう。揚物、ハンバーグ系、ソテーものも充実。でも定食以外の一品もののメニューがここのウリのようなのです。すき焼きもあれば、蟹の甲羅を使ったカニグラタンもある。飲んだ後のウナギ茶漬けやてんぷらそばもある。お漬物は10種類以上。
 お店の壁一面に張られたメニューを見ながら何を頼もうかと考え始めると、最初に見たものが何だったかを忘れてしまうくらいです。


【下町のおじさんたち】


 実はこのお店、お客さんのなかでも、おじさんグループが何と言っても素敵なんです。
 一日の仕事を終えた皆さんが、行けば必ずいるはずの知り合いを見つけ、ホッピーやチューハイをグイグイといきながら、大声で話し、笑いながら過ごしています。気取ったところなんて微塵もなし。とにかく「素」に戻った愉快なおじさんたちがアッチにもコッチにも。アルコールがダメな僕でも、迷惑を掛けることを省みず「ご一緒に」と言ってしまいそうです。
 

 おなかはいっぱいになるし、元気は貰えるし、楽しい夜は過ごせるし。僕の定食屋ランクで言うと久々の三塁打と言ったところ。僕は、次に行ける日を楽しみにしながらもメニュー攻略法を考えています。


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